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階級区分図を作成する際の適切な配色設定

2019/12/31 (火)

日本の市区町村の人口密度(手動間隔 7分類)

ArcMap ユーザーが ArcGIS Pro を使い始めると不慣れな違和感を感じることがあるかと思いますが、私はその一つとして ArcGIS Pro から追加されたこの配色が気になっていました。

ArcGIS Pro でしか表示されない配色(5分類)

ArcGIS Pro でしか表示されない配色(5分類)

ArcGIS Pro はクラスの分類数によって適切な配色が表示されるようになった

ArcMap で [カラー ランプ (Color Ramp)] と呼んでいた中間色の自動生成は ArcGIS Pro で [配色 (Color Schema)] と呼ばれるようになりました。配色には従来のカラー カラーランプにはない細かい設定が備わっています。

レイヤーの数値分類で等級色を設定する際、配色では従来のアルゴリズム カラーランプのように連続的な色の変化と、断続的な色の変化が設定できます。たとえば、レイヤーを数値分類の等級色表示するとデフォルトの 5分類では以下の配色一覧が表示されます。

ArcGIS Pro の配色(5分類)

ArcGIS Pro の配色(5分類)

ArcMap では、デフォルトでランダム カラーランプやプリセット カラーランプを除いて、このような連続的な色の変化しか選択できませんでした。

ArcGIS Pro のシンボル分類(10分類以上)

ArcGIS Pro では、数値分類のクラスが 9分類までに限り、以下のように断続的な配色が追加されています。しかも 1~3分類だと 3クラスが、4~9分類だとそれぞれのクラスが、10分類以上だと連続分類のみが自動的に切り替わって表示されます。[すべて表示] をチェックすると一覧を表示して確認できます。

ArcGIS Pro の配色分類

ArcGIS Pro の配色分類

ArcMap のカラーランプには以下の 4種類があります。

  • アルゴリズム カラーランプ(AlgorithmicColorRamp):開始色と終了色を指定し、その中間色は選択したアルゴリズムで遷移
  • ランダム カラーランプ:指定した色調でランダムな色を生成、個別値に最適
  • プリセット カラーランプ(PresetColorRamp):GUI だと 13色を指定した色を割り当て
  • マルチパート カラーランプ:上記3種類のカラーランプを複数結合して作成

ArcGIS Pro の配色には以下の 4種類があります。

  • 連続配色:開始色と終了色を指定し、その中間色は選択したアルゴリズムで遷移。中間色も割合で指定可能なので、ArcMap ではマルチパート カラーランプで作成していたものが連続配色だけで作成可能となった。
  • 不連続配色:指定した色を断続的に配置。配色で指定できる数は理論上無制限。
  • ランダム配色:指定した色調でランダムな色を生成、個別値に最適
  • マルチパート配色:上記3種類の配色を複数結合して作成

アルゴリズム カラーランプが連続配色に、プリセット カラーランプが不連続配色に進化し、機能が強化されています。それ以外に、配色のプリセットが充実したことや、データの内容に対してより直感的な最適設定が選択しやすくなったということでしょう。

また、ArcMap ではカラーランプのプロパティはカラーランプ上を右クリックしてメニューを選択するのですが、そのメニューの場所は知っていないと分かりません。ArcGIS Pro ではプロダウン内に [配色の書式設定...] という項目が用意されているのでプロパティへのアクセスが分かりやすくなっています。新人の頃、先輩から「ArcMap はとにかくいろんな所を右クリックすればメニューが見つかる。」と教えてもらったのを思い出しましたが、ArcGIS Pro は Windows の標準的な UX/UI が理解できていれば割と直感的に操作できます。

 

クラス数は人間が識別できる数に留めるのが理想

毎回いくつに分類すれば良いのか悩むところですが、適当な方法としてスタージェスの公式があります。

スタージェスの公式よると、1900 余りある日本の市区町村は 12分類するのが適当と求めることができます。また、ArcMap / ArcGIS Pro では最大 32種類に数値分類できるので、公式に当てはめると 2億個のフィーチャを適当に分類できると言えます。私はこれまで公式に従って機械的に分類するクラス数を決めれば良いと思っていましたが、最近読んだ本でそれだと必ずしも適当ではないことに気づかされました。

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12分類の配色だと凡例の中では隣の色の違いが識別できますが、地図上で塗りつぶされた色が凡例のどの分類に該当するかを対応付けするのは難しいです。ましてや32段階だと色の違いを明確に識別できません。

 

ArcGIS Pro を使い始めた当初、新しく表示されるようになった [不連続配色] は必要なのか疑問に思っていました。連続配色で 5分類すれば似たような色が求められると思っていたからです。しかし、実際は同じ 5分類でも連続配色と不連続配色の場合は微妙に色調が異なっています。より閾値間の色調に差を出したい場合は不連続表示を選択した方が良いです。不連続色調が 9分類までしか用意されていないのも、現実的に等級色設定で 9分類以上に設定するべきではないことを意味しているのだと個人的には考えます。

ベストを尽くしてマッチベターを探す

地図の表現は絶対的な正解(ベスト)と言える例は少なく、長年、学問や業界の経験から得られた常識がより良い正解(マッチベター)になっていると思われます。そのため、ベテランや研究者が作られているいろんな良い地図を "見て" どのように描かれているかを考え経験値を積むのが近道です。今現在だと GIS に完全に親和性のある地図作成のベストな和書がないので、この辺を来年は考えていきたいところです。

それでは良いお年を。

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  • この記事を書いた人

羽田 康祐

伊達と酔狂のGISエンジニア。GIS上級技術者、Esri認定インストラクター、CompTIA CTT+ Classroom Trainer、潜水士、PADIダイブマスター、四アマ。WordPress は 2.1 からのユーザーで歴だけは長い。 代表著書『地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる』 GIS を使った自己紹介はこちら。ESRIジャパン(株)所属、元青山学院大学非常勤講師を兼務。日本地図学会第31期常任委員。発言は個人の見解です。

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