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ArcGIS ProでPatchJGDを使用する方法

はじめに

とーかさん(@tohka383)のポストを読んで久しぶりにブログを書こうと思いつつ、数日が経ってしまいました。

現在の日本の測量で用いられている測地系は日本測地系2011(JGD2011)ですが、かつては日本測地系2000(JGD2000)と日本測地系(Tokyo)がありました。ほとんどのGISユーザーはこの3つとWGS84の4種類を知って変換できればよいとされています(私も測地系をそのように説明しています)。

しかし実際の測量では、2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震のように、大きな地殻変動を伴う地震があった場合や、プレート運動による地殻変動の補正に対応した補正用のパラメーターが国土地理院から提供されています。

ここでは、ArcGIS Proの標準機能備わっている、測地成果2000や測地成果2011以外の座標変換方法について紹介します。

ArcGIS Pro での操作方法

大まかな流れは次のとおりです。

  1. *.gsbファイルを作成する
  2. 新しい地理座標系の作成」で仮想的な別の測地系を定義する
  3. カスタム地理座標系変換の作成」ツールを実行し、NTv2変換用のパラメーターを作成する
  4. 「投影変換」ツールを実行し、測地系を変更する
  5. (同じ測地系に変換したい場合は)「投影法の定義」ツールを実行し、仮想的に変更した別の測地系を元の測地系に上書きする

1. *.gsbファイルの作成

国土地理院のPatchJDGは、地域毎パラメーターファイル(*.par)で変換しますが、これがNTv2(National Tranformation Version 2)という方法で同様に処理できます。NTv2は地域毎のパラメーターファイルとして*.gsbファイルを使用しますが、ArcGIS Pro / ArcMap自体にはこのファイルを作成する機能はありません。そこで、別のツールを使用して作成します。

こちらで、*gsbファイルの変換方法や、変換したデータを提供しています。

*.gsbファイルを作成・ダウンロードしたら、以下のパスに格納します。

C:\Program Files\ArcGIS\Pro\Resources\pedata\ntv2\japan

2. 新しい地理座標系の作成

ArcGISは測地系=地理座標系として定義しますが、「投影変換」ツールで同じ名前の異なる測地系に変換することはできません。たとえば、能登半島地震の変換パラメーターをJGD2011からJGD2011として適用することはできないのです。そこで、仮想的に別の名前の地理座標系を定義します。

「座標系」ダイアログのアイコンから、「新しい地理座標系」を選択し、名前に適当な名称を設定します。この名称はWKTがASCIIのみ使用可能という制約から、ArcGIS Proの場合は半角英数しか入力できません。回転楕円体はJGD2011と同じGRS80楕円体を使用します。

また、ArcGISは投影座標系の定義の中に地理座標系が内包されており、これを持って何の測地系の投影座標系かを決めます。もし、平面直角座標系のような投影座標系を使用する場合は、仮想的な名称の地理座標系が定義された投影座標系を定義してください。

3. カスタム地理座標系変換の作成

NTv2変換するためのパラメーターを作成します。ジオプロセシングで「カスタム地理座標系変換の作成」ツールを検索して実行します。

  • 地理座標系変換名:適当な名称を指定します。
  • 入力地理座標系:GCS_JGD_2011を指定します。
  • 出力地理座標系:2.で作成した名称を指定します。
  • カスタム地理座標系変換:「NTv2」を選択し、グリッド データセット名に1.で保存した、~\pedata\ntv2\以下のパスと*.gsbのファイル名を指定します。

4. 投影変換

「投影変換」ツールを実行します。出力座標系として、2.で作成したカスタムの地理座標系を指定し、地理座標系変換で、3.で作成したパラメーターを指定します。

投影変換して作成された新しいフィーチャクサウには、2.で作成した独自名称の座標系が定義されています。

5. 投影法の定義

ArcGISは、座標系の名称によって同一の測地系か異なる測地系かを定めているため、仮想的に設定した座標系を元の名称(JGD2011)に戻します。定義を上書きします。

確認

たとえば、令和6年能登半島地震のPatchJGDを用いてポイントの座標を変換した例です。富山県での沿岸部では数㎝~20㎝ほど移動していますが、元のポイントの座標値がシフトしていることが確認できました。

マップに「座標変換」が設定されていると、正しい位置関係にオンザフライで重ね合わせするため、ズレが確認できません。異なる座標のズレを確認したい場合は変換パスを<Do not transform>と指定してください。

  • この記事を書いた人

羽田 康祐

伊達と酔狂のGISエンジニア。GIS上級技術者、Esri認定インストラクター、CompTIA CTT+ Classroom Trainer、潜水士、PADIダイブマスター、四アマ。WordPress は 2.1 からのユーザーで歴だけは長い。 代表著書『"地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる』 GIS を使った自己紹介はこちら。ESRIジャパン(株)所属、元青山学院大学非常勤講師を兼務。日本地図学会第31期常任委員。発言は個人の見解です。

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