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ArcGIS とは何を示す名称なのか

2018/2/14 (水)

はじめに

久しぶりに ArcGIS の歴史に関するお話です。表題の答えをさくっと知りたい方はまとめをご覧ください。

数年前から日本地図学会の地図用語専門部会の活動として「デジタル地図用語集」が編纂されています。この部会の作業を少しお手伝いしていて「ArcGIS」という用語解説を担当することになり、助力を得ながら説明文を作成しました。

ほとんどの方は

ArcGIS = ArcMap (ArcGIS Desktop)

例:「ArcGIS を起動する。」「ArcGIS でバッファーを作る。」

と認識されているでしょうが、実際は単なる一製品ではなくもっと幅の広い意味があります。もちろん普段「ArcGIS を起動して。」とか「それなら Arc で処理できるよ。」とか言ったりしますが、我々がそのような会話をする際は対象製品の認識を暗黙の了解で一致させています。

ここでは「ArcGIS」という言葉が誕生する少し前にさかのぼって説明してみます。ついでにどのバージョンでどんな特徴があったかも簡単に説明しておきます。

バージョン8 以前:ARC/INFO と ArcView

1981年、Esri が世界ではじめて「商用 GIS ソフトウェア」として誕生させたのが "ARC/INFO" です(出典 Esri WebsiteWikipedia によるとイニシャル リリースは 1982年と書かれています)。ARC/INFO は、Esri(当時はESRI)社が開発した図形描画・作成・解析機能である "ARC" と、Henco 社が開発していたシングル ユーザー データベース ソフトウェアである "INFO" *1 *2 *3 を組み合わせて実現したものです。

1987年には MS-DOS(後に Windows)で動作する "PC ARC/INFO" という製品も登場しています(出典 Wikipedia)。

"ArcView" は 1991 年に米国でバージョン1 が登場しました(出典 Wikipedia)。バージョン2 は 1995年7月に国内で販売開始され(出典『パスコ50年史』)、ここで「シェープファイル」が登場します。バージョン3 は米国1995年のリリースで(出典 Wikipedia) "ArcView GIS" にリネームされます。

ARC/INFO と ArcView はコンセプトの異なる製品です。2つの製品を比較するとハイエンド ユースは ARC/INFO、よりライトユースなら ArcView という位置づけで使われてきました。

ライトユースが登場した背景には 1986年(出典 Wikipedia)に世界初の「デスクトップGISソフトウェア」である MapInfo 登場したことが考えられます。MapInfo は DOS で動作するもので、当時ワークステーションという高価なハードウェア上でしか動作できなかった商用ソフトウェアを低価格帯に広げた功績があります。ArcView はこの対抗馬として登場したと考えられます。※MapInfo社は2007年に Pitney Bowes 社に買収されて消滅。さらに 2019年8月に Pitney Bowes 社の MapInfo 部門は Syncsoft 社に譲渡されます(出典 Wikipedia)。

バージョン8 が登場する直前では ARC/INFO は 7.2、PC ARC/INFO は 4.?、ArcView GIS 3.2 でした。

ちなみに私がはじめて操作した GIS ソフトが ArcView GIS 3.2 で、2000年の秋でした。このときはまだ手順書に従った操作でデータ入力することしかできませんでした。

バージョン8:ArcInfo 8 が誕生

1999年末、米国で ArcInfo 8 がリリースされます。8.0 ではありません。小数点以下がない場合は整数で記載するのがルールのようです。

この時まだ "ArcGIS" という言葉は存在していません。Wikipedia に記載のリリース歴では ArcGIS に 8 も含まれていますが、バージョン 8 に対応するものは ArcInfo のみです。この製品名が "ArcInfo Desktop" で、ArcMap / ArcCatalog / ArcScene / ArcToolbox という 4つのアプリケーションが含まれていました。バージョン9になるまで、ArcToolbox.exe という独立したアプリが存在し、ArcGlobe はまだありませんでした。

従来の ARC/INFO は、"ArcInfo Workstation" として前のバージョンに遡って名前を変えて継続します。別途 CD-ROM からインストールして使うのですが、私は一度も ArcInfo Workstation を触ったことはありませんでした。はじめて ArcInfo Workstation の画面を見たのは社会人になった後で、某取引先のコンピューター上でした。旧来の ArcInfo Workstation に対して新しい ArcInfo は "ArcInfo Desktop" と呼ばれていました。インストーラーの CD-ROM にそう書かれていた記憶があります。

このバージョンは大きな転換点で、それまで FORTRAN で開発されていたソフトウェアを COM で再構築したのです。この COM で作られたコンポーネントを「ArcObjects(アークオブジェクツ)」といい、ArcObjects によってデスクトップ アプリケーションが作られました。ArcObjects は当初から膨大なクラスが存在し、きめ細かい開発が可能で、VBAVB6VC++Delphi(当初はサポートされていた)などの COM 対応言語で機能拡張することができました。COM は .NET からも操作することができるので、現在のバージョンでは Visual BasicVisual C# で開発できます。

もう一つ、「ジオデータベース」という新しい GIS フォーマットが登場します。これまで Esri の代表的な GISフォーマットといえば 「カバレッジ」と「シェープファイル」でした。ジオデータベースはシェープファイルのようにシンプルなフィーチャも管理できつつ、トポロジーも扱えます。また、ラスターなど GIS で扱えるさまざまなデータ モデルが一つの器に集約できる利用できる新しい GIS フォーマットです。

「ArcObjects」と「ジオデータベース」がバージョン8 以降のキーテクノロジーとなっています。ただし、ArcObjects は ArcGIS Desktop(後の ArcGIS Pro を除く)、ArcGIS Engine、ArcGIS Server(現在は特殊な開発に限り使用)に限られ、現在リリースされているその他の製品には使われていません。ジオデータベースもバージョンによってどんどん機能拡張されていきます。

私はこの頃大学 3年生で、ゼミの授業終了後に多忙で恩師不在がちの研究室に通って「ArcInfo 8」を触り始めた頃でした。

この時がまさに「ArcGIS 誕生前夜」と言えるでしょう。

ArcGIS 8.1:"ArcGIS" ファミリーが誕生

はじめて ”ArcGIS" という言葉が登場したのは 2001年のバージョン 8.1 リリース時になります。

過去の ESRI NEWS でこのような記述がありました。

ArcGIS is a family of software products that form a complete GIS built on industry standards that provide exceptional, yet easy-to-use, capabilities right out of the box.

ArcGIS は業界標準に基づいて構築された「コンプリート GIS」を構成するソフトウェア製品ファミリーであり、使いやすく、すぐに使用できる機能を提供します。

この記載を読むと、"ArcGIS" は一つの製品名称ではなく、一連の製品群の総称(=ファミリー)という扱いになっています。Microsoft Office に置き換えると判りやすいです。

ArcGIS ファミリーに何が含まれているのかというと、代表的なものに

  • ArcInfo
  • ArcEditor
  • ArcView

があります。この 3 つの製品を総称して "ArcGIS Desktop" と呼びます。ArcGIS Desktop は前バージョンの ArcInfo Desktop の後継版です。ライセンス グレードを分けて使える機能を基本的なものに制限したのが ArcView です。従来の ArcView GIS 3.2 から 8.1 とずいぶんジャンプしましたが、それはバージョンをそろえることが目的です。ArcObjects ベースの ArcGIS Desktop で基本のグレードに "ArcView" という名称を継承させました。「できること」はほぼ同じですが、内部のプログラムは ArcView GIS とは全く異なります。同時に ArcEditor というエディションも登場しましたが、これは ArcInfo と ArcView の中間の機能が使えるように新規に登場した名称です。これらはすべて同じ ArcObjects ベースで開発されたもので、適用するエディションのライセンスによってボタンが有効・無効になるよう制御されていました。

ArcGIS ファミリーは他にも以下の製品がありました。

  • ArcSDE
  • ArcIMS
  • ArcPad
  • ArcGIS Extensions
    • ArcGIS Spatial Analyst
    • ArcGIS 3D Analyst
    • ArcGIS Geostatistical Analyst
    • ArcGIS StreetMap(現在は消滅)
    • ArcPress for ArcGIS(現在は消滅)
    • MrSID Encoder for ArcGIS(現在は消滅)
    • TIFF/LZW Compression for ArcGIS(現在は消滅)

上記のエクステンションは、現在も継続的に存在しているものや、標準ライセンスに組み込まれて消滅したものもあります。

この時点ではまだ従来の ArcView GIS も販売されていましたが、2002年にリリースされたバージョン 3.3 が最終バージョンとなりリタイアしました。

ArcGIS 8.x は 8.3 まで順当に機能を強化しながら進化します。

バージョン 8.1 では教育用に ArcView 25本パックというものがあり、恩師が大学の教室用に 2セット(=50本)購入していました。これでやっと授業で ArcGIS が使えるようになったのですが、恩師が多忙のため半年間研究室に放置されっぱなしでした。なので、ゼミの雄志と余ったパソコンにライセンス サーバーをインストールし、大学の教室に ArcView を 50台インストールしてソフトが使えるようにするというのがゼミでの最初の GIS 操作実習でした。バージョンアップも含め、大学卒業までに述べ 500台はインストールしてます。他の大学に出張インストール サポートをしに行ったこともありました。

ArcGIS 8.2:ArcReader が登場

2002年にリリースされた ArcGIS 8.2 で ArcGIS Publisher エクステンションが登場し、このエクステンションで出力した地図は無償アプリケーション ArcReader で動く地図(属性を表示したりレイヤーのオン・オフが可能)として利用できるようになりました。

ArcGIS 8.3:カバレッジの編集ができなくなる

カバレッジの操作経験はないのでだいぶ後になって先輩から聞いた話です。

ARC/INFO のネイティブ フォーマットであるカバレッジはバージョン 8.2 まで ArcMap の [エディタ] ツールバーから編集できていましたが、バージョン 8.3 から編集できなくなってしまいました。カバレッジの読み込みは ArcMap でも引き続き可能です。

カバレッジは直接編集することはできなくなりましたが、ArcGIS Workstation もインストールすると、ArcToolbox でジオデータベースなどに変換することができました。

エクステンションとして、ラスターベクター変換を行う ArcScan が加わりました。ArcScan は現在標準ライセンスで使えるエクステンションとなっています。

ArcNews July - September 2003

ArcGIS 9:「GIS は第9章へ」

当時のESRIジャパンが作成した製品カタログのキャッチコピーです。

ArcGIS 9 では「ArcGlobe」という 2つめの 3Dアプリケーションが登場します。これまでユークリッド平面上に 3D 表示することしかできなかった ArcScene に加えて Google Earth のような地球ベース上に 3D モデルが表示できるようになりました。また「ジオプロセシング ツール」という機能が追加され、空間分析やデータ処理をツール、モデル単位で実行することができるようになりました。これに伴い、ArcToolbox.exe は廃止され、ArcMap / ArcCatalog / ArcScene / ArcGlobe アプリケーション内から呼び出す仕組みに変更されました。当初の ArcToolbox はデータ変換ツールの役割しかもっておらず、空間分析は ArcMap のメニューやツールバーから呼び出していました。ArcMap のメイン メニューにあった空間分析機能(バッファー、クリップ、ディゾルブ、インターセクト、マージ、ユニオン)は消えジオプロセシング ツールに代わっていきます。

ArcGIS 9 では「マージ」がなくなり「アペンド」で代用することなったので混乱しました(その後のバージョンで復活)。

また、「ArcGIS Engine」「ArcGIS Server」が登場し、サーバー用途や組み込み開発でも ArcObjects が利用できるようになりました。

ここで、ArcGIS ファミリーの製品ジャンルが確立します。Esri のブランディング戦略により色が決められていました。

  • デスクトップ:青
  • サーバー:緑
  • モバイル:紫
  • エンベデッド:臙脂
  • データ:黄土
  • ソリューション:オレンジ

さらに細かい話しをすると、ArcObjects のクラスが膨大になりすぎたため、従来1つのライブラリだったものを機能別に分類するようになりました。ArcMap 8.x のメイン メニューから消えた空間解析機能は ArcObjects API レベルとしては未だ健在しています。

ArcGIS 9.1:ArcGIS Network Analyst が登場

2005年にリリースされた ArcGIS 9.1 で交通解析を行うエクステンションとして ArcGIS Network Analyst が追加されます。ArcView GIS 3.x ですでに Network Analyst は存在していたのですが、このバージョンで交通解析をするためのジオデータベースのデータモデルであるネットワーク データセットが追加され、交通解析が可能になりました。

新卒社会人となった秋の GISコミュニティフォーラムにあわせて国内でバージョン 9.1 がリリースされた記憶です。

ジオプロセシング ツールに「マージ」が復活します。

あと、このバージョンから ArcGIS Desktop ヘルプの日本語版が ESRIジャパンより提供されはじめます。学生の時に出してくれたら苦労も少なかったのにと心の中で思いました。

ArcGIS 9.2:ファイル ジオデータベースと高精度ジオデータベースの登場

2006年 ArcGIS 9.2 が登場します。

マップ ドキュメントやジオデータベースは基本的にバージョン依存で、古いバージョンで作成したデータは新しいバージョンでも読み込めるが、新しいバージョンで作成したものは古いバージョンでは読めない構造になっています。これは保存する形式を旧バージョンに対応させれば問題ないのですが、得にジオデータベースで大きな転換点がありました。

フォーマットとして、「ファイル ジオデータベース」が登場します。これまでジオデータベースは Microsoft Access (*.mdb) 形式の「パーソナル ジオデータベース」と Oracle などに ArcSDE を介して格納する「マルチユーザー ジオデータベース(後のエンタープライズ ジオデータベース」しか存在しませんでした。バージョン 9.2 でデータ格納容量が膨大になる「ファイル ジオデータベース」が登場します。

ジオデータベースの持つ座標精度も 31ビットから53ビットに向上します。これにより、空間参照の座標精度と空間ドメインを気にする必要がなくなりました。座標精度の詳細については ArcGIS Desktop ヘルプをご参照ください。

ArcGIS Server 9.2 では「マップ キャッシュ」という概念が生まれました。すでに Google Maps ではタイル画像を使って高速に地図表示する仕組みが確立していました。Web系の製品である ArcIMS や ArcGIS Server 9.1 まではあらかじめ地図をタイル画像として生成しておく概念はなかったのですが、バージョン 9.2 で登場したマップ キャッシュを使うことで高速に地図表示ができるようになりました。ArcIMS はマップ キャッシュの機能が追加されることなくバージョン 9.3 でリタイヤしています。

ArcGIS 10:ArcPy の登場とオンラインが台頭し始める

2010年にリリースされたバージョン 10 では、ジオプロセシングが強化され、Python を使用した API として「ArcPy」が登場します。これまでも Python でジオプロセシング ツールは使用できましたが専用の API は用意されていませんでした。Esri は ArcMap 上で動作させる簡易な処理を VBA から Python にシフトさせようとする転換期になります。ArcPy の登場で VBA のサポートはバージョン 10 が最後となります。ただ、VBA を使用しているユーザーは未だ多いため、非サポートではありますが、過去から継続的に使用しているユーザーに限り、バージョン 10.x の間 VBA を使い続けることができます。

.NET だと都度プロジェクトを作ってビルドする必要があるので、個人的には ArcObjects をさらっと書いて実行できる開発環境として VBA は最高です。

また、この頃 arcgis.com(現在の ArcGIS Online)が登場し、背景地図にはタイルで生成されたレイヤーを下に置き、高速に地図表示するという概念が浸透しており、ArcMap も ArcGIS Server から配信された背景画像用レイヤーを配信して重ねるということが主流になってきました。

ArcInfo Workstation はバージョン10 を最後にリタイヤしました。

また、バージョン10 から製品ジャンルにおける明確なカラーはなくなってきました。このページのアイキャッチ画像で示した ArcGIS のロゴマークも使われなくなりました。

ArcGIS 10.2:製品の名前が変わる

従来の製品名が変更になりました。

  • ArcGIS Desktop → ArcGIS for Desktop
  • ArcGIS Desktop (ArcInfo) → ArcGIS for Desktop Advanced
  • ArcGIS Desktop (ArcEditor) → ArcGIS for Desktop Standard
  • ArcGIS Desktop (ArcView) → ArcGIS for Desktop Basic
  • ArcGIS Server → ArcGIS for Server
  • ArcGIS Spatial Analyst 等 → ArcGIS Spatial Analyst for Desktop、ArcGIS Spatial Analyst for Server 等
  • ArcGIS Engine → 変更なし

このバージョンで、伝統的な製品名がなくなってしまった訳ですが、歴史を何も知らない人からすると「ArcInfo」と「ArcView」はどちらが上位ライセンスか分からないので、誰が見ても分かるようになったという点では良い方向に向かっているのでしょう。

ArcGIS 10.3:次世代のデスクトップ アプリケーション "ArcGIS Pro" が登場

2014年バージョン 10.3 のリリースで、ArcGIS for Desktop の追加アプリケーションとして ArcGIS Pro が登場します。製品としては ArcGIS Desktop の一アプリケーションですが、インストーラーとしてはまったく別物でバージョンも 1.0 から振り直しとなっています。2018年2月時点でバージョン 2.0 が最新です。

ArcGIS Pro はリボン インターフェイスで .NET で開発されており、表向きは脱 ArcObjects (COM) となっています。64bit アプリなので使用可能メモリが膨大となり、非同期処理が特徴で、特にポータルと親和性が高いです。しかし、現時点での機能はまだ ArcMap に及びませんが、バージョン 2.0 ならほとんどのユーザーの利用要件は満たせられるでしょう。

Esri から ArcMap がリタイヤするという公式のアナウンスはされていませんが、Esri ユーザー会のデモで ArcMap を見かけることはなくなりましたし、これまで 8.x や 9.x は x.3 で次へと繰り越していたところが、10.x は 10.6 までのリリースが決定していることから、来たるべき 11 は完全に ArcGIS Pro の世界になるのではないかと個人的に期待しています。

ArcGIS 10.5:製品名が元に戻る

製品名が再び変更になりました。

  • ArcGIS for Desktop → ArcGIS Desktop
  • ArcGIS for Server → ArcGIS Enterprise
  • ArcGIS Engine → 変更なし

ArcGIS Engine はずっと同じ製品名のままですが、ArcGIS Engine はバージョン10.5 が最終バージョンでリタイアする予定となっています。その後の方針変更で、少なくともバージョン 10.x の間は ArcGIS Engine は継続するそうです。長年 ArcObjects に関わってきた身としては寂しいですね。

ArcGIS 10.8:ArcGIS Desktop のファイナル バージョン

2020年5月に国内で ArcGIS 10.8 がリリースされました。このバージョンで ArcGIS Desktop (ArcMap など)は最終バージョンとなり、バージョン10.8.2 を最後として、2026年にサポートも終了となります。

ArcGIS Enterprise は、バージョン 11 がリリースされ、継続的にバージョンアップしていますが、ArcMap からサービス公開はできなくなり、ArcGIS Pro との連携のみとなっています。

まとめ:今現在 "ArcGIS" が意味するところ

やっと現在に戻ってきました。現在、ESRIジャパンの説明を引用すると ArcGIS とは

あらゆる業務で地図を最大限に活用し、迅速かつ合理的な意思決定を実現する GIS プラットフォーム

と書かれています。2001年に「製品ファミリー」として登場した ArcGIS ですが、今は「プラットフォーム」という位置づけで使われています。その背景には ArcGIS Online や Portal for ArcGIS のようなポータルと Web が中核に据えられているからと考えられます。バージョン番号は 1982年に登場した ARC/INFO から踏襲されていますが、 ブランディングは時代に即して変化しているということですね。

つまるところ、今も昔も ArcGIS は特定の製品名ではないということです。また、ArcGIS は 2001年より前には存在しません

ですので「うちでも ArcGIS を使いたい。」と言っても前後の文脈で疎通できていないと話しが通じないですし、「1990年代から ArcGIS を使っている。」「ArcGIS 3 を触っていた。」ことはありえませんので気をつけましょう。

参考

謝辞、免責

この記事を書くにあたり、ARC/INFO 時代もご存じな方のご協力に感謝します。ご支援いただいたのはあくまで用語集の校正で、この記事はその副産物ということでご容赦ください。

ArcGIS ロゴマークは 米国 Esri 社サイトの過去のページから引用しました。

また、事実に反する点がございましたら修正しますのでご指摘ください。

本文に記載のリリース年は米国に基づきます。国内でのリリースは年を跨いで翌年となった場合もあります。

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  • この記事を書いた人

羽田 康祐

伊達と酔狂のGISエンジニア。GIS上級技術者、Esri認定インストラクター、CompTIA CTT+ Classroom Trainer、潜水士、PADIダイブマスター、四アマ。WordPress は 2.1 からのユーザーで歴だけは長い。 代表著書『地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる』 GIS を使った自己紹介はこちら。ESRIジャパン(株)所属、元青山学院大学非常勤講師を兼務。日本地図学会第31期常任委員。発言は個人の見解です。

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