「Webメルカトル(ウェブメルカトル)」の由来と真相

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Webメルカトルの由来

「Webメルカトル」は地図投影する際の地球楕円体の定義が肝だったということは理解いただけましたでしょうか。「Webメルカトル」の名付け親は私の知る限り Esri です。Google自身は、自社のサイトのどこにも「Webメルカトル」なんて用語は使っていません。EsriがArcGIS 9.3から「Web Mercator(auxiliary sphere) (WGS 1984)」という名称で座標系のプリセット名に使用したことに由来します。Googleマップの地図の投影法は「メルカトル図法」なんだけど、地図投影する際の地球楕円体はWGS84ではないし、Google自身は特に名称を定めてはいません。「Webマップで使われてるしWebメルカトルにするか」的な感じで付けられたのでしょうか。すみません、これは勝手な想像です。なので、なぜ「Webメルカトル」という名称になったのかは分かりませんでした。

また、「Webメルカトル図法」と説明されている資料もよく見かけます。Wikipedia英語版のページも「Web Mercator projection」として作成されているのですが、

Webメルカトル(座標系) = 測地系:WGS84+地図投影法:メルカトル球体補正図法(疑似メルカトル図法)

なので、Webメルカトルを図法の名前として捉えると、図法は図法でできているという、よくわからない説明が成り立つことになってしまいます。

Webメルカトルで使われている地図投影法は

  • ArcGIS:Web Mercator Auxiliary Sphere メルカトル図法(球体補正)
  • QGISなどのFOSS4G:Pseudo Mercator 疑似メルカトル図法

という名称になっています。

そして、Webメルカトルは座標系の名前であるのため、それ自体にタイル画像を定義するための概念は含まれていません。

以前 Google のフォーラムに「Googleマップの座標系は厳密には何という名称なのですか?」と質問しましたが、的を射た答えは得られませんでした(履歴が見つけられなくて掲載できません)。

Googleマップが大ブレイクしてから、有名な地図サイトである、Microsoft Virtual Earth(現 Bingマップ)、Yahoo!地図マピオン、そして ArcGIS Onlineと、ほとんどがGoogleマップに追従してデファクトスタンダードとなりました。その後「Webメルカトル座標系」は EPSG で座標系のコード番号(900913 → 3857)が採用されたので、もはやデジュールスタンダードになってます。他にはOGCでGoogleマップ由来のタイル画像スキーマがWMTSとして規定されてますが、これが原因で、Webメルカトルがタイルの定義と思われる理由かもしれません。

そりゃ偏平率 0 の方が余計な計算が不要で処理は速くなるんだろうけど、それは地図を生成してキャッシュ画像を作る時の話なので、地図はタイル画像なのだから WGS84 のままで良かったんじゃないのかと考えます。

Googleマップの開発者がもう少し地理に長けていたら、こんな世の中にはならなかったのに、、、そもそもGoogleより前にEsriにタイルの発想があればよかったのに、と考えてしまいます。

まとめ

ということで、これが「Webメルカトル座標系」の真相でした。最後に、もう少し詳しく「Webメルカトル座標系」の定義を見てみます。ArcGISで「Webメルカトル座標系」を定義すると、2種類で示せられます。

WGS_1984_Web_Mercator_Auxiliary_Sphere
WKID: 3857 出典: EPSG
-
Projection: Mercator_Auxiliary_Sphere
False_Easting: 0.0
False_Northing: 0.0
Central_Meridian: 0.0
Standard_Parallel_1: 0.0
Auxiliary_Sphere_Type: 0.0
Linear Unit: Meter (1.0)
-
Geographic Coordinate System: GCS_WGS_1984
Angular Unit: Degree (0.0174532925199433)
Prime Meridian: Greenwich (0.0)
Datum: D_WGS_1984
Spheroid: WGS_1984
Semimajor Axis: 6378137.0
Semiminor Axis: 6356752.314245179
Inverse Flattening: 298.257223563

WGS_1984_Web_Mercator
出典: カスタム
-
Projection: Mercator
False_Easting: 0.0
False_Northing: 0.0
Central_Meridian: 0.0
Standard_Parallel_1: 0.0
Linear Unit: Meter (1.0)
-
Geographic Coordinate System: GCS_WGS_1984_Auxiliary_Sphere
Angular Unit: Degree (0.0174532925199433)
Prime Meridian: Greenwich (0.0)
Datum: <カスタム>
Spheroid: <カスタム>
Semimajor Axis: 6378137.0
Semiminor Axis: 6378137.0
Inverse Flattening: 0.0

前者が投影法の力で測地系を変換した「Webメルカトル座標系」で、後者が測地系と投影法で定義した場合の「Webメルカトル座標系」です。ArcGIS 9.3では上記2種類のプリセット座標系が定義されていましたが、ArcGIS 10.1 以降では後者のプリセットはなくなっています。

参考

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この記事を書いた人

伊達と酔狂のGISエンジニア。GIS上級技術者、Esri認定インストラクター、CompTIA CTT+ Classroom Trainer、潜水士、PADIダイブマスター、四アマ。WordPress は 2.1 からのユーザーで歴だけは長い。
代表著書『"地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる
GIS を使った自己紹介はこちら。ESRIジャパン(株)所属、2021年度~2023年度まで青山学院大学非常勤講師も兼務。日本地図学会常任委員。好きな地図投影法はパース・クインカンシャル図法とマクブライド・トーマス平極四次曲線図法。発言は個人の見解です。

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