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「Web メルカトル(ウェブメルカトル)」の由来と真相

2016/2/17 (水)

Web メルカトルの由来

「Web メルカトル」は地図投影する際の地球楕円体の定義が肝だったということは理解いただけましたでしょうか。「Webメルカトル」の名付け親は私の知る限り Esri です。Google 自身は、自社のサイトのどこにも「Web メルカトル」なんて用語は使っていません。Esri が ArcGIS 9.3 から「Web Mercator(auxiliary sphere) (WGS 1984)」という名称で座標系のプリセット名に使用したことに由来します。Googleマップの地図の投影法は「メルカトル図法」なんだけど、地図投影する際の地球楕円体は WGS84 ではないし、Google 自身は特に名称を定めていない。「Web マップで使われてるし Web メルカトルにするか。」的な感じで付けられたのでしょうか。すみません、これは勝手な想像です。なので、なぜ「Web メルカトル」という名称にしたかは確信がありません。

以前 Google のフォーラムに「Googleマップの座標系は厳密には何という名称なのですか?」と質問しましたが、的を射た答えは得られませんでした(履歴が見つけられなくて掲載できません)。

Googleマップが大ブレイクしてから、有名な地図サイトである、Microsoft Virtual Earth(現 Bingマップ)、Yahoo!地図マピオン、そして ArcGIS Online ほとんどがGoogleマップに追従してデファクトスタンダードとなりました。その後「Webメルカトル座標系」は EPSG で座標系のコード番号(900913 → 3857)が採用されたので、もはやデジュールスタンダードになってます。他には OGC で Googleマップ由来のタイル画像スキーマが WMTS として規定されてますが、これが Web メルカトルがタイルの定義と思われる理由かもしれません。

そりゃ偏平率 0 の方が余計な計算が不要で処理は速くなるんだろうけど、それは地図を生成してキャッシュ画像を作る時の話なので、地図はタイル画像なのだから WGS84 のままで良かったんじゃないのかと考えます。

Googleマップの開発者がもう少し地理に長けていたら、こんな世の中にはならなかったのに、、、そもそも Google より前に Esri にタイルの発想があれば、、、と考えてしまいます。

まとめ

ということで、これが「Web メルカトル座標系」の真相でした。最後に、もう少し詳しく「Web メルカトル座標系」の定義を見てみます。ArcGIS で「Web メルカトル座標系」を定義すると、2 種類で示せられます。

WGS_1984_Web_Mercator_Auxiliary_Sphere
WKID: 3857 出典: EPSG
-
Projection: Mercator_Auxiliary_Sphere
False_Easting: 0.0
False_Northing: 0.0
Central_Meridian: 0.0
Standard_Parallel_1: 0.0
Auxiliary_Sphere_Type: 0.0
Linear Unit: Meter (1.0)
-
Geographic Coordinate System: GCS_WGS_1984
Angular Unit: Degree (0.0174532925199433)
Prime Meridian: Greenwich (0.0)
Datum: D_WGS_1984
Spheroid: WGS_1984
Semimajor Axis: 6378137.0
Semiminor Axis: 6356752.314245179
Inverse Flattening: 298.257223563

WGS_1984_Web_Mercator
出典: カスタム
-
Projection: Mercator
False_Easting: 0.0
False_Northing: 0.0
Central_Meridian: 0.0
Standard_Parallel_1: 0.0
Linear Unit: Meter (1.0)
-
Geographic Coordinate System: GCS_WGS_1984_Auxiliary_Sphere
Angular Unit: Degree (0.0174532925199433)
Prime Meridian: Greenwich (0.0)
Datum: <カスタム>
Spheroid: <カスタム>
Semimajor Axis: 6378137.0
Semiminor Axis: 6378137.0
Inverse Flattening: 0.0

前者が投影法の力で測地系を変換した「Webメルカトル座標系」で、後者が測地系と投影法で定義した場合の「Webメルカトル座標系」です。ArcGIS 9.3 では上記 2 種類のプリセット座標系が定義されていましたが、ArcGIS 10.1 以降では後者のプリセットはなくなっています。

ちなみに、先日の記事にも書いたように、たとえ地球が球体であっても一定以下の縮尺だと支障はありません。ただ、Googleマップはかなり拡大して使われてますよね。それを考えると、どうなんでしょう。そもそもメルカトル図法で家屋形状が見えるレベルまで拡大しても良いのものなのか、という疑問も出てきます。こちらについては新しい考察を追記したので併せて参照してください。

参考

※この情報は ArcGIS バージョンアップ履歴と当時の Googleマップを取り巻く情勢を元に執筆しました。情報に誤りがある、という方がおられましたら是非コメントをお寄せください。

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  • この記事を書いた人

羽田 康祐

伊達と酔狂のGISエンジニア。GIS上級技術者、Esri認定インストラクター、CompTIA CTT+ Classroom Trainer、潜水士、PADIダイブマスター、四アマ。WordPress は 2.1 からのユーザーで歴だけは長い。 代表著書『地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる』 GIS を使った自己紹介はこちら。ESRIジャパン(株)所属、元青山学院大学非常勤講師を兼務。日本地図学会第31期常任委員。発言は個人の見解です。

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