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GIS のスキルを活かした就職先

2020/9/27 (日)

仕事探し

海外で地理学を学んでいる学生の方からこんな質問を受けました。

新卒の学生が日本でGIS関連の仕事に就職したい場合、どのような会社があるでしょうか?色々調べたのですがあまり新卒向けの求人がなくて困っています。

学生の方は海外の大学で地理学を勉強しているそうで、日本の情報が乏しいようです。

そこで、GIS のスキルを活かした就職先探す方法を紹介します。大学で学んだことはあくまで青春の 1ページであり、就職は別ものという考えの方はさておき、大学で学んだ知識を存分に活かした職種に就きたいという熱い想いのある方の参考になれば幸いです。

就活学生に限らず社会人の転職の参考にもなると考えます。

GIS はどこで使われているのか

まず、GIS(地理情報システム)はどの分野で使われているのかを考えます。15年前に「GIS は製造業を除くあらゆる分野で活用できる。」という文書を読んだ記憶がありますが、現在はサプライチェーンリスク管理事業継続計画 (BCP) への活用を考えると、製造業にも適用できます。つまり「GIS はあらゆる分野で活用できる」といえます。

この「あらゆる分野」というのが幅広すぎて、就活の対象業種の絞り込みを困難にします。そのため、いくつかの切り口で探していきます。

業種から考える

GISソフトウェアベンダーのサイトにはどのような業種でどのような使い方ができるのかをまとめたページがあります。業種ごとの活用法はこれらのページが参考になります。

導入事例から考える

同じく、GISソフトウェアベンダーには導入企業を紹介しているページがあります。事例に掲載されるということはその企業でGISが利用されているということです。事例は具体的な会社や団体を見つけるのに最適です。

会社別に考える

空間情報コンサルタント

日本では当初、主な海外GISソフトウェアの販売代理店を航空測量企業が行っていたこともあり、その会社でも地図作製をはじめ、GIS は活用されています。事業部も多彩です。

当初は航空測量から地図を作るのが主な事業ということで航空測量業(航測会社)と呼ばれていますが、現在は自治体の地図サービスや調査など幅広い事業を行っていることから空間情報コンサルタントとも呼ばれています。

全国に展開している主要 4社を挙げます。

この他にも地方に基盤を持つ会社も多くあるので、地元で働きたい場合は「航空測量」「空間情報コンサルタント」をキーワードに探すと良いでしょう。

航測を含めた測量業界をとりまとめた協会があります。

これらの企業には長年 GIS に携わっているベテランも多くいますので、ベテランの知見を直接垣間見ることができるのも利点でしょう。

建設コンサルタント

いわゆる建コンです。建コンの目的は建物やダムなどの建築・土木事業を行うだけではなく、環境調査など、データ収集から報告書作成などもあるので、そのために GIS を活用することができます。

建コン企業は航測企業とも重複します。

建コンでは空間情報コンサルに比べて GIS そのものは業務の手段のひとつにすぎないので、GIS のベテランが多くいる訳ではありませんし、GIS の活用が主力ではありません。逆に言うと GIS のスキルが高いと一目置かれるでしょう。

地図調製業

地図を作製することを調製(ちょうせい)といいます。調整ではありません。GIS の機能として当然地図を作ることができますので、空間分析ではなく地図づくりをしたいのであれば、地図調製企業を選択するのも方法です。

地図調製企業であっても単に地図を作るだけではなく、地図から派生したサービスやシステム開発を行っている場合もはるので可能性は広がります。

一般向けの地図、産官学向け、カーナビ用地図を製作している会社をいくつか挙げてみます。

大手電機メーカー

大手電機メーカーは大規模なシステム開発を行っているので、プロジェクトの一部として GIS が使われていることもあります。開発システムの規模は比較的大きいので、十分なやりがいもあるでしょう。

形態によっては親会社はプロジェクトマネージメントを主として、実際の開発(GIS を現場で使う)はグループ企業で行う形態の場もあります。日本の開発の縮図ですが詳しくはこの辺この辺の記事を参考にしてください。

行政

中央省庁や地方公共団体でも GIS が活用できます。地図作りの国家機関といえば国土地理院が浮かびます。それ以外の省庁や自治体でも使われています。国策として GIS の活用が挙げられているので、どこでも使われる可能性はありますが、導入規模は大きく違います。予算調達や熱心な団体には差がありますので、前に示した導入事例から調べるのが良いでしょう。

ただ、行政は数年で部署異動があるのでずっと GIS が使えるとは限りませんし、政治の影響を受けて進退する可能性もあります。

教員

GIS が主ではありませんが、教えることに関心があるなら教員を目指す手もあります。GIS というより地理学を活かした仕事です。

2022年度から数十年ぶりに高等学校で地理が必修化されます。その中では「地図とGISを活用すること」が謳われていますが、全教員の中で GIS が使える割合はかなり低いです。そんな中で GIS の技術を持っていれば教員の中でも一歩抜きん出ることができるでしょう。

ただ、海外大学では日本の教員免許が取得できないのが難点です。

就職サイトを活用する

鉄板ですが、就職サイトから「GIS」「地理情報システム」「空間情報」などのキーワードで企業を探す方法です。

GIS の人材を募集している企業は、キーワードに「GIS」を入れています。たとえば、主要な就活サイトで「gis」をキーワードとして入力すると、それぞれ数十社がヒットします。

ソフトウェア別に考える

特定の GIS ソフトウェアに思い入れがあったり、学校で使っていた GISソフトウェアを使って仕事がしたいのであれば、ソフトウェア ベンダーの導入事例を参考にすると良いでしょう。

主要な商用ソフトウェアと開発元、国内総販売代理店は以下のとおりです。

QGIS はオープンソースのプロジェクトなので、特定企業が開発しているわけではありませんが、それを主軸に導入コンサルやトレーニングを展開している企業もあります。

「地図が作りたい」とか「環境アセスメントに従事したい」のような特定の利用目的ではなく、GISソフトウェアそのものに関心があるなら、使い方を伝える立場として GISソフトウェアベンダーで働くという方法もあります。製品自体の知識はその企業が一番よく知っているはずなので、勉強にもなるのはもちろん、さまざまな業種での利用を知り、提案できる可能性もあります。

ポジションがとれる企業を選ぶ

航空測量業のような往年の企業は、ベテランも多いですし、同じ経験値を積んできた同期も多いでしょうから、そこそこのスキルでも優位には立てません。逆に GIS に弱い組織だと最初から自分の優位性を高く保つことが出来ます。まずは組織で GIS のニーズを高める必要がありますが、経営者は利益が得られると判断すれば投資します。実際にそうやって大手企業でポジションをつかんだ友人もいます。

たとえば「データサイエンティスト」は需要過多で供給が足りていません。データサイエンスで位置情報を扱うなら GIS は欠かせません。全国のデータサイエンティストの中で GIS / 地図学に知識が深い人は 0.1% もいないでしょう。

地図や GIS をよく知っている人はまだまだ少ないのでブルーオーシャンです。ただ、

高校地理必修化はニーズの増加に期待できますし、人材の普及にも期待ができます。今のニーズのままだとパイの取り合いになってしまうので、GIS の可能性に気づいてもらいパイを増やす(海を大きくする)活動も必要です。

"GIS" をどの範囲で捉えているのかにもよりますが、GIS は情報技術 (IT) の形態の一つなので、さまざまな技術を理解している方が有利ですし、当然ながら地理学・地図学の知識も必要です。

ただし、新卒採用の学生で最初から頼れる先輩もいない会社で GIS の強みだけで闘うのは不安です。

先生に相談する

研究者のタイプに寄りますが、もし指導教員が産官とのつながりも深いのであれば、先生に相談してみると良いでしょう。

海外では日本に比べると GIS の知名度と活用の割合は高いです。海外に留学している学生で日本の企業を考えるなら、まずは海外で興味のある会社を考え、類似の企業が日本にないかを探してみる方法が考えられます。

気になる収入

やりがいのある楽しい仕事に就けると幸せですが、収入も気になるところです。海外でも抜きん出て高い訳ではありませんが、日本は海外に比べて GIS エンジニアの人材価値はとりわけ高く評価されていない印象です。それが人材が集まらない要員の一つと考えます。

幅広い能力があっても、GIS に強い興味があるわけではないのであれば、あえて GIS という選択肢に絞ると見込める収入が減ることでしょう。

GIS の知識で高い収入を期待するならコンサルティングファーム(シンクタンクなど)が考えられます。コンサルタントの情報収集の能力は高く見識は広いでしょうが、皆が実際にソフトウェアを使いこなしているとは考えにくいので、GIS の技術力を持っていることは強みになります。ただ、仕事として GIS に触り続けられるか分かりませんし、その前に採用試験を突破する高い能力が必要でしょう。

おわりに

身の上を話すと、私は大学の地理学科で出会った GISソフトそのものに興味を持ったので、まさに「手段を目的にする」就職を選択しました。特定の業種に関心を持つよりも、汎用的な知識をどうやって個々の業種に展開するかに関心があるので妥当な選択肢だったと思っています。第1希望の会社は設立して日が浅く、就職サイトには掲載されていませんでしたし、採用ページはあきらかに中途募集を醸し出したシンプルなものでした。ただ、新卒は募集していないとも明記されていなかったので思い切って応募したら結果として国内大学新卒入社第1号となりました(たまたまその年から国内大学の新卒採用を始める計画だったそうですが)。

私の恩師は産官とのつながりも強く、学生の就職に強い関心のある先生だったので、GIS業界の情報は他に比べて多く入手できていました。業界向けのイベントにも比較的積極的に参加して情報収集しているつもりだったので、特に就職活動になって企業研究をすることもありませんでした。

別の実体験ですが、GIS ができる人材がいない組織で GISのニーズを引き出すことができれば強みになります。たとえば、GIS 部門を立ち上げて将来は統括する立場になる、というのもベンチャー企業なら夢ではないでしょう。もちろん輝かしい未来だけが待っている訳ではなく、泥臭い仕事、労使との対価など、理想と現実とのギャップに悩むかもしれません。

企業規模にこだわらなければもっとたくさんの企業があるでしょう。これは私が見聞きした内容と経験から求めたものなので、個人の一感想に過ぎません。今後は適宜入手した情報を反映させていきます。この情報だけで就職先を絞り込むのは難しいでしょうが、参考になれば幸いです。

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  • この記事を書いた人

羽田 康祐

Esri認定インストラクター、GIS上級技術者、測量士補、潜水士。GISy / GISc とその関連分野である地理学・地図学について日々の出来事で学んだ記憶を記録するためにブログを書いています。行動原理は伊達と酔狂。好きな地形は圏谷。好きな地図投影法はパースクインカンシャル図法。呉市生まれ広島市出身。GIS を使った自己紹介はこちら

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