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「第193回 地図学サロン」参加

2019/4/20 (土)

前日に地図学の先生からお誘いをいただき「地図学サロン」という会合に参加してきました。

第193回地図学サロン ポスター

地図学サロン

学会などの団体に所属する部会という訳ではなく、独立した運営をされているとのことで、25年の歴史があるのだそうです。参加費もお茶菓子+会場費(大学)の 300円です。こんな会合があるとは知りませんでした。

世界地図の技術史 ~18世紀以降の事例を中心に~
大山 洋一氏

近代投影法の歴史とそこで発展してきた技術を説明してもらうというものでした。ものすごく密度の高い内容で、様々な投影法とそれを開発した人物、過去に開発された投影法へに対する課題や議論を投げかけ、どのように進化していったのかというお話でした。

真に投影法を理解するとは投影法の計算式が理解できることだと常々思っていましたが、まさにその方でした。

アジェンダ

  • 0. 世界地図の歴史
    • 話題提供の理由
    • 地図作成の手順
    • 18世紀以前のおもな世界地図
  • 1. 18世紀 地図作成技術の大きな進化【驚異の年】
    • エドワード・ライトの処理
    • デカルト「方法序説」
    • 驚異の年
    • 近代地図学の先駆者
  • 2. 19世紀 数学者による正角図法の技術革新【地図にも「あい」を】
    • ガウス平面
    • 最良の正角図法
    • 等角写像
  • 3. 20世紀 世界地図における歪み
    • 正積擬円筒図法
    • 正角、正積という特性にとらわれない開発
    • 正積円筒図法開発における論争
  • 4. 未来の投影法への期待

参考文献

  • Snyder, J. P., 1993. Flattening the Earth -Two thousand years of map projections, the University of Chicago Press.
  • Bugayevsliy, Lev M., Synder, J. P., 1995. Map Projection -A reference Manual, Taylor & Francis.
  • Canters, F., 2002, Small-scale Map Projection Design, Taylor & Francis.
  • Peters, A., 1983, The New Cartography, University Carinthia Friendship Press.
  • デカルト、谷川多佳子訳、1997 「方法序説」岩波書店
  • ジェリー・プロトン、西澤正明訳、2015「世界地図が語る 12 の歴史物語」バジリコ(株)

コメント

発表後のディスカッションでいろんな意見が出されましたが、その一部を紹介します。

投影はプログラミングでできるが、政春さんや野村さんの本のように計算原理までとは言わなくても、プログラムで地図が作れる方法、どういう特性があるかの解説を概要として説明し、プログラマーがプログラミングできるような本があると良い。→私もそんな本が欲しいです。

Esri のサイトは分かりやすい書き方がされているが、説明の内容が、、、

現役の高校先生方からは、高校の地理教育でも地図投影法を学習するし大切なので時間を割きたいけど単元で使える時間がない。それでも少し長めに時間を取っている、と教える側としても苦労されているようでした。

投影法を開発してきた偉人のなかで、一番を挙げると誰かという質問に対して、大山氏は「ランベルト」と答えられていました。複数の投影法を開発した人はいるが、「方位・円錐・円筒」、「正角・正積」など、複数のカテゴリーに渡った開発をした人は後世にもあまり例がない、とのことです。

地図を分かりやすく学ぶサイトとして 2例挙げられました。このようなインタラクティブ(自分で動かせる)なサイトで地図を理解するために GIS が活用できるいう意見もありました。

※注:The True Size of... はネットのニュースにも出たことがありますが、「日本は意外と大きい」のではなく、「ロシアは意外と小さい」と理解するのが正解です。メルカトル図法は赤道から離れるにつれて面積が誇張されるのだから、日本を北に動かすと面積が大きくなるのは当然です。このサイトを正しく使うには、各国を赤道付近に移動させて比較するのが適当です。

懇親会で

投影法の「投影」をどのように説明すれば良いのか悩んでいるという質問をしたのですが、的確に答えていただきもっと早くお目にかかれていればと思うばかりでした。

やはり計算で証明するのが一番説得力があるのだなとは思いますが、私も含めて計算式が通じない人たちにどう分かりやすく伝えるかが課題です。普段仕事で投影変換はするけど投影法の計算式まで理解しているという人はごく少数でしょう。私も含めてそういう人たちに計算しなくても実務に困らない程度の原理が理解できる参考書が欲しいです。

参考

大山氏の Webサイト

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  • この記事を書いた人

羽田 康祐

伊達と酔狂のGISエンジニア。GIS上級技術者、Esri認定インストラクター、CompTIA CTT+ Classroom Trainer、潜水士、PADIダイブマスター、四アマ。WordPress は 2.1 からのユーザーで歴だけは長い。 代表著書『地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる』 GIS を使った自己紹介はこちら。ESRIジャパン(株)所属、元青山学院大学非常勤講師を兼務。日本地図学会第31期常任委員。発言は個人の見解です。

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