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平面・測地線・航程線・大楕円線、それぞれの距離とは?

2016/2/4 (木)

はじめに

ArcMap には距離や面積が求められる [計測] ツールというのがあります。地図上でクリックして距離や面積がぱっと求められます。

[計測] ツール

このツールで [計測タイプの選択] で何を選べば正しい結果が計測できるの?「測地線」と「大楕円線」の違いって何?。について調べてみました。ArcGIS のヘルプにはこのように書かれています。

平面[平面] 計測では、2 次元直交 (デカルト) 演算を使用して長さと面積を計算します。このオプションは、投影座標系での計測時のみ使用でき、その座標系の 2D 平面が計測の基準として使用されます。このタイプの計測ツールによって求められる面積の計測値はすべて平面を基準にしています。
測地線回転楕円体 (楕円体) の地表上の 2 つのポイント間の最も短いライン。測地線の使用例として、2 都市間を結ぶ飛行機の飛行経路における最短距離の決定があります。楕円体ではなく球体の場合、大円となります。
航程線航程線は、2 つのポイント間の最短距離ではなく、一定の方位または方位角のラインを定義します。大円ルートは多くの場合、いくつかの航程線に分解され、ナビゲーションを単純化します。これは「等角航路」ともいいます。
大楕円線回転楕円体の中心および線分の始点、終点を通る平面と、回転楕円体の表面との交線によって定義される回転楕円体 (楕円) 上のライン。球体を使用している場合、大円となります。大楕円タイプでは、ラインのみ作成できます。

ArcGIS ヘルプ 距離と面積の計測 より引用

ArcMap で計測

図解しよう!ということで実際に計測した結果を見てみてください。地図は 外射図法 (Vertical Perspective)(※注)という、一見宇宙からの 3D マップのように見える投影法です。

外射図法での表現

メルカトル図法での表現

メルカトル図法での計測結果も作成しました。

解説

「平面」は、投影座標系でのみ使用できます。「2 次元直交 (デカルト) 演算を使用して」とありますが、デカルト座標で求められた距離はユークリッド距離とも呼ばれている、いわゆる「算数や数学で習った XY 座標上での距離」です。

「測地線」で測った距離は、2点間の最も短い距類です。地球儀の上で 2 点を紐で伸ばして弛みなくピンと張ったときに得られる線分の距離です。

「航程線」で測った距離は、等角コースです。方位角(北から何度か)を常に一定にして目的地を目指すルートです。等角コースは、正しい角度をもって経線に対して何度かを考えるので、経線が平行で且つ正角図法であるメルカトル図法では直線となります。方位角(舵角)を同じに保ち続ければ目的地にたどり着けるので大航海時代に登場しました。

「大楕円線」で測った距離は「測地線」と似ていますが厳密には違います。大楕円は回転楕円体の表面で最も大きく描ける円で、大圏コースともいいます。大楕円の中心は回転楕円体の中心と一致します。

高校の地理では地球上の2点間を結ぶ最短の距離を大圏コースと習うので、当初その違いがよく分かりませんでした。以前会社の先輩と何が違うんだろうと話題になったことがあって、先輩が「おもいっきり偏平した回転楕円体を使ったら分かりやすいんじゃない?」と言ってこんな図を書いてくれました。

赤の 2 点間の距離だと、測地線は最短経路なのでショートカットして結んだ線になります。一方、大楕円は必ず円弧の中心が回転楕円体の中心と一致していないといけないので円の外周に相当します。大楕円は場所によっては必ずしも最短経路にはなりません。この図だと違いがよく分かります。地球も回転楕円体なので、厳密には測地線距離と大楕円距離の計測結果の距離が違っているところをキャプチャ画像で見てみてください。

まとめ

基本的に、投影座標系(平面直角座標系や UTM 座標系)なら [平面] を選び、地理座標系なら [測地線] を選ぶのが適当です。投影座標系で [平面] と [測地線] が同じということにはなりません。よく「どちらが正しいのですか?」と質問されますが、上記のように測り方の説明をした上で「どちらも正しいです。」という答えになります。

ただし、メルカトル図法のように距離が正しくない投影法もあるので、この場合は [測地線] で距離を求めるのが適当です。メルカトル図法はインターネットでよく見る地図の投影法ですが、これを見るといかにメルカトル図法の最短距離がまっすぐでないかがよく分かります。

2016年2月8日追記

計測中(マップ上をクリックして距離を測定し始めている)場合は、[計測タイプの変更] はできません。また、まだ Web マップでメルカトル図法がメジャーとなる以前の古いバージョンの ArcGIS Desktop の場合、投影座標系では [測地線] は選択できません。[大楕円線] も古いバージョンでは使用できませんのでご注意ください。

数年前に先輩と「大楕円線距離とは何か?」という話になった時に書いた図が Evernote に残ってたので引っ張ってみました。サイトをリニューアルしたんじゃけぇがんばって毎日記事書くわ!、と密かに連続ブログ投稿チャレンジしてるんですが、コンテンツを考えるのと短時間で書くことの難しさ。毎日家に帰って寝る前にまとめるのは根気が要ります。世のブロガーと呼ばれる人はよくやってるなぁと感じます。

2018年3月29日追記

※注 当初、Vertical Perspective を「投射図法」と記載しておりましたが、投射図法は一般名詞で、リンク先の Vertical Perspective は説明から「外射図法」であるとご指摘いただきました。日本語の投影法名称は Esri のヘルプに記載のものを引用していたのですが、ひとまず英語名称の投影法に変更しました。「投射図法」は、「外射図法」(有限の距離から見る)や「正射図法」(無限の距離から見る)などの総称で一般名詞であるとのことです。ご指摘ありがとうございます。

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  • この記事を書いた人

羽田 康祐

伊達と酔狂のGISエンジニア。GIS上級技術者、Esri認定インストラクター、CompTIA CTT+ Classroom Trainer、潜水士、PADIダイブマスター、四アマ。WordPress は 2.1 からのユーザーで歴だけは長い。 代表著書『地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる』 GIS を使った自己紹介はこちら。ESRIジャパン(株)所属、元青山学院大学非常勤講師を兼務。日本地図学会第31期常任委員。発言は個人の見解です。

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