「真東の方向」と「真東に進む」の違い

2019/5/22 (水)

はださん
地理クイズです。東京を起点として常に真東に進路を取って進み続けると、どこにたどり着くでしょうか?
1.アメリカ合衆国
2.チリ
3.コロンビア
4.タンザニア

※ここでいう真東とは、真北から方位角 90度の方向です(解説)。

チリ。地理だけに。
はださん
残念!答えはアメリカ合衆国です。地図で描くと一目瞭然ですね。

メルカトル図法に描いた等角航路

東京の東はチリでしょ。メルカトル図法は方位が正確じゃないって習ったし。

と思われた方は、もう一度問題文をよく読んでください。

「常に真東に進路を取って進み続ける」とはコンパスが示す角度である舵角が 90度となる等角航路をということです(ここでは磁北との偏角は考えず真北で考えてください)。等角航路を唯一直線で示すことができるメルカトル図法で東京から真東の直線を引くとアメリカ合衆国にたどり着くことが分かります。

正距方位図法で示されるもの

チリだと思った方は、正距方位図法を想像されたことでしょう。

正距方位図法(東京中心)から描いた真東に描いた等角航路と大圏航路

正距方位図法は、地図の中心と任意の地点の 2点間の距離と方位が正しい投影法で、中心から任意の地点を引いた直線が大圏航路になります。この説明を解説するため、このような記述をよく目にします。

東京から真東に進むとチリにたどり着く

こちらの記事にも同様の解説が書かれていますが、上記の説明を聞いて以下のどちらで理解されますか?

  • 出発地点の時だけ真東を向く
  • 常に進路が真東を向く

私はずっと後者で理解していました。そのためメルカトル図法の舵角と混乱してよく分からなくなってしまいます。

これは、「進む」という表現が誤解の根源だと考えています。どちらの説明も違わないと思われた方は正距方位図法で出発地点以外の方位を考えてみましょう。

東京-チリ間の途中で方位を再確認

東京(35.70°N, 135.75°E) を中心とした正距方位図法では真東方向にチリがあります。そしてチリにたどり着く前に途中でハワイ諸島の南部約200km 辺り(以降ハワイ)を通過します。東京から見てハワイも東にあるんですね。

正距方位図法(東京中心)から描いた真東に描いた等角航路と大圏航路

それではハワイ (17.830°N, 157°W) を中心にした正距方位図法を作成し、ハワイから真東の直線を引きます。そうすると真東はコロンビアになるのです。

正距方位図法(ハワイ中心)から描いた真東

ハワイの真東はチリではなくコロンビアなのです。おかしくないですか?

たしかに、東京から見るとハワイもチリも東にあります。

正距方位図法(東京中心)に描いた等角航路と大圏航路

しかし、ハワイから見るとチリは東ではなく東南東~南東の方角になるのです。そしてハワイから東京を見ると西ではなく西北西にあるのです。

正距方位図法(ハワイ中心)に描いた等角航路と大圏航路

「見る」と「進む」の違い

その場所から見た方角と、その方角で進むのは意味が違います。正距方位図法は地図の中心からの方位が正しく表現されています。「見た」と言い換えることができるでしょう。しかし、「進む」と表現すると、進んだ先から「見た」場合方位は変わってくるのです。

東京、ハワイそれぞれから真東に「見た」方角と、真東に「進む」線をメルカトル図法で描くとこのようになります。

メルカトル図法に描いた等角航路と大圏航路

真東を見た先は宇宙

見た方向という説明も誤解を生む原因だと考えています。

その場所からまっすぐ東を見続けてもチリは見えません。だって地球は丸いから。標高 0m で人間が見渡せる水平線・地平線は 4km 程度です。高度を上げるとより遠くまで見渡すことができますが、どうやっても 90度を超えた裏側を見渡すことはできません。

東京から真東の視点

「東京の真東、厳密に方位角90度・仰角0度の先は?」

という質問の答えは宇宙です。光は直線でしか進むことができないので(地球の重力程度では光は曲がらない)、ハワイはかろうじて直線の真下にあるものの、直線は大陸にたどり着く前に宇宙に出てしまいます。

東京から仰角0°で真東に引いた直線(外射図法)

これは
方向は常に地表に沿って進むことを前提とする

という説明すれば誤解が解けます。

素直に地球を三次元で考えているとこのような疑問が生まれます。私もそうでした。それは捻くれた考えだと思われた方は、地球の重力に魂を縛られているのです(笑)。

「地球儀に紐をピンと張る」という説明もよくされますが、「地球儀に紐をピンと張った直線」なんていうと混乱します。地球儀に沿った紐は横から見たら湾曲しているので直線ではないです。

まとめ

目標との方角は、移動すると変わるのです。

  • ○:東京から真東の方向にチリがある
  • ×:東京から真東に進み続けるとチリにたどり着く

より厳密に説明するなら

  • ○:東京を起点として真東を向き、向いた方向から地表に沿ってまっすぐ進み続けるとチリにたどり着く。
    東京を出発する時点では真東を向いているが、直進するつれて舵角は変わる。
  • ○:東京から真東の方向にはチリがある。ただし方向は仰角を考慮せず常に地表と平行とする。

となります。説明が難しい。

同じような疑問に思われる方は結構いるようで、このような質問をされる方もいました。

ですので、正距方位図法の説明に「進む」を使うことはやめるべきです。あくまで起点からの「方向」という説明に留めることで誤解がなくなります。

また、方向を「見た方」として理解するなら、
人類は地球の重力に魂を縛られているので宇宙には飛び出さない

ことが前提です。

専門用語でいうところの球面幾何学(非ユークリッド幾何学)です。たまにクイズ番組に出てくる、三角形の内角の和が 270度になる空間です。数学では三角形の内角の和 は180度と習いましたが、あれはユークリッド幾何学での場合です。

ここまで理解していなくても高校のテストや受験で点は取れますが、私は納得できる説明に出会えず長年悩んでいました。

解説で示したハワイを中心とした正距方位図法を描くといったように GIS を使えば自由に投影法が変更できるので理解が深められます。疑問に思われた方は実際に操作してみてください。これが GIS の真価です。

「真東はいつもひとつ!」

より端的で分かりやすい説明方法がありましたらご教示ください。

  • この記事を書いた人

羽田 康祐

伊達と酔狂でエクストリーム スポーツに挑む GIS エンジニア。 GIS、IT、趣味に関して日々の出来事で学んだ記憶を記録するためにブログを書いています。同じ問題に出会った方の参考になっていただければ幸いです。GIS を使った自己紹介はこちら

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