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テレビで見るGIS :『NHKドキュメンタリー - 大捜索ドキュメント! 屋久島“伝説の超巨大杉”』

2017/8/17 (木)

久しぶりにこのシリーズです。以前から NHK の番組に面白さを感じてるのですが、久しぶりに ArcMap が使われているシーンが映ってて別の面白さを感じました。8月15日に放送された NHKドキュメンタリーです。

NHKドキュメンタリー - 大捜索ドキュメント! 屋久島“伝説の超巨大杉”

屋久島は樹齢千年以上の屋久杉が生えていて、その中でも縄文杉が有名です。今回の番組では未発見の超巨大屋久杉を探索しましょう、という趣旨です。とは言っても原生林生い茂る広大な屋久島からしらみつぶしに巨大杉を探索することはできないので、なんらかの方法で絞り込んで現地調査するんだろうと思ってました。JR線路沿いのシーンから "東京 府中" とテロップが表示されたので国際航業さんだとわかり、ArcGIS が出てくれることに期待します。

国際航業東京事業所(府中市)

期待通り ArcMap が出てました。

ArcMap 画面

一連の分析方法を見てみます。

映像から見た推測した分析手法です。樹木の頭頂部を含む高さ(DTM)から地盤の高さ(DSM)を差し引いた結果をラスター データとして表現しています。このラスターからどうやって樹木一本の相当の涼気を持つポリゴン フィーチャを作成したのかは分かりませんが、もし ArcGIS だけで抽出しているのだとしたらどなたか教えてさい。ポリゴンには属性情報として、少なくとも樹高と樹種が含まれています。これである一定の高さ以上で、針葉樹という絞り込みを属性検索で行っています。針葉樹か広葉樹かはラスターのバンド特性から判断した結果をポリゴンにオーバーレイしてるのでしょう。そして、河川データ、急斜面データ(これは DSM から作成できる)とを空間検索でインターセクトして絞り込んでいます。最後にレイヤーを右クリックして [データ] → [データのエクスポート] で操作して新しいデータを出力します。

マップに重ねて表示されたポリゴン数(本数)が 12,000本 という結果を見て「多すぎ(大杉)~」とショックを受けます。さらに空中写真とつきあわせて目視判読の手作業で 300本にまで絞り込んでます。たいていこのようなの分析作業を行うと、そこそこ自動で分析できますが最後は人海戦術でなんとかします。分析あるあるです。

もう少しマニアックな視点で見ると、ベクターはシェープファイル、ラスターは IMG 形式を使っています。ArcMap の画面構成は [ジオプロセシング] ウィンドウを [コンテンツ] ウィンドウで3 ウィンドウ並列表示で表示していて、[標準] ツールバーの位置が標準の場所にないところがちょっと気になりました(笑)。脱シェープファイルして ArcGIS Pro がテレビに映るまであと何年かかるのでしょうか。

推定した結果を基に、屋久島のベースキャンプでブリーフィングを行い、屋久島のベテラン登山ガイドが原生林に立ち入って歩いて見つけます。

ベースキャンプでブリーフィング

最初の現地調査

ただ、最初に推定できた 300 本の箇所から密度の濃い地域に焦点を当てて調査した結果では、そこそこの大木は見つかったものの決定的な大木は発見できずでした。

そこで、国際航業の技術者さんがレーダー測量のデータを駆使して最終的に 15 箇所にまで絞り込みます。「いまある技術で空から探索では我々が持っている中では最高のもの。」「やれることはやったなぁと。」

FuguroViewer というフリーソフトで LIDAR データの確認をしています。ただ、DEM データ作成時にも LIDAR を使っているはずだし、最初のブリーフィング シーンでも LIDAR データが表示されていたのでこのストーリーは演出ではなかろうかという疑問が残ります。

FugroViewer で LiDAR データの表示

15 カ所に絞り込み

この推定情報を元に、さらに険しい奥地に入っていきます。途中沢を降下するキャニオリングもしてますが、これをドローンで見事に撮影しています。

ドローンでキャニオリングの撮影

最後、周長 12m43cm(縄文杉に次ぐ大きさ)、高さ 43m(一番の高さ)の巨大屋久杉を発見し、ハイタッチして感動のフィナーレとなります。

この撮影をするためにはドローン本体と保護するケース、数日間島内を縦走するため充電はできないから予備バッテリーも相当数持って行く必要があることから、かなりの重量を背負ってることが想像できます。かつかなりの登山経験が必要ということを考えると、ロングテールの先にあるニーズ(絶対数は少なくていいけど必ず欲しい人財)だと感じます。

他から聞いた話ですが、現在 NHK が使っている主軸は DJI Phantom 4 Pro。DJI にはよりハイエンドな機材があるけどこれで十分らしい。NHK の番組でドローンがばりばり使われていつつも、現在 NHK の局員でドローンが操縦できる人は全国で 6 人しかいないそうです。そこでドローン パイロットの育成も取り組み始めているとのこと。

先日見た別の NHK 番組でもドローンが使い込まれていて欲しくなります。

終。NHK の番組は何年経っても最後は「終」なんですね。

画像は NHK の放送から引用しました。

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  • この記事を書いた人

羽田 康祐

伊達と酔狂のGISエンジニア。GIS上級技術者、Esri認定インストラクター、CompTIA CTT+ Classroom Trainer、潜水士、PADIダイブマスター、四アマ。WordPress は 2.1 からのユーザーで歴だけは長い。 代表著書『地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる』 GIS を使った自己紹介はこちら。ESRIジャパン(株)所属、元青山学院大学非常勤講師を兼務。日本地図学会第31期常任委員。発言は個人の見解です。

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