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グード図法で地図投影法のパラメーターを考える

2020/1/22 (水)

グード図法の中央子午線と断裂区域

はじめに

高校地理の地図単元では、世界地図で利用される正積図法として以下の地図投影法を習います。

  • サンソン図法
  • モルワイデ図法
  • グード図法

導入方法としては、

  1. 丸い地球を完璧に平面に表現するのは不可能
  2. 地図の 4要素(距離、面積、角度、方位)のいずれかを正確に表現する地図投影法を使う
  3. 地図のうち面積が正しいものを正積図法という
  4. 正積図法の例として代表的なものが以下の 2種類
サンソン図法(中央子午線 経度0度)

サンソン図法

モルワイデ図法(中央子午線 経度0度)

モルワイデ図法

  1. この 2つの投影法は図の端がひずんでいるので、お互いのいいとこどりをして緯度40度44分(40.73666度)で接合して、赤道側はサンソン図法、極側はモルワイデ図法を使用し、海洋部を断裂させてひずみを抑えたグード図法が作られた
  2. グード図法はホモロサイン図法ともいう
グード図法

グード図法

だいたいこんな感じでしょう。少なくとも私が高校地理で習った内容はこのような説明でした。

グード図法を習った高校生当時、2つの疑問を持ちました。

  • 極に近づくほど、サンソン図法は急激に歪むのに対して、モルワイデ図法が緩やかなのは分かるが、それならモルワイデ図法だけで海を断裂させればいいんじゃないの?
  • サンソン図法もモルワイデ図法も、地図の端の形は相当歪んでいる。その歪んだ地図を貼り合わせても歪むんじゃないの?実際、グード図法の日本付近はかなり歪んでるので、形が正しくなったとは思えない。

今回はこの 2つの疑問を解消する方法を考えてみます。

サンソン図法とモルワイデ図法の違い

サンソン図法とモルワイデ図法は、共に正積図法という面積が正しく表現できる擬円筒図法です。形状の違いは見た目からも分かりますが、赤道から極に向かって急速に収束するか、緩やかに収束するかの違いがあります。

サンソン図法とモルワイデ図法(赤道同一長)

サンソン図法とモルワイデ図法の違い

サンソン図法

サンソン図法は以下の特徴があります。

  • 正積
  • 緯線は赤道に平行な直線
  • 緯線が中央子午線に対して直角
  • 赤道の長さと中央子午線の長さの比は 1:2
  • 経線の形状は正弦曲線(サインカーブ)
  • 緯線間隔は等間隔
  • 中央子午線上と赤道上は正距(あらゆる方向に長さと角の歪みがない)
  • 緯線の長さは正しい
  • 正弦曲線 (sinusoidal) 図法、メルカトル正積図法、メルカトル サンソン図法、サンソン フラムスチード図法とも呼ばれる

地球を回転楕円体ではなく球体として考えると、L = 2πR・Cos(φ)(L:緯線長、φ:緯度、R:地球の半径)となります。Cos60°は 0.5 なので、緯度60度上の長さは赤道長の半分になります。

モルワイデ図法

モルワイデ図法は特徴があります。

  • 正積 ※
  • 緯線は赤道に平行な直線 ※
  • 緯線が中央子午線に対して直角 ※
  • 赤道の長さと中央子午線の長さの比は 1:2 ※
  • 経線の形状は楕円弧(ホモロカーブ、楕円曲線は別の意味なので正弦曲線に対して使うと誤りになる)
  • 緯線間隔は等間隔でない
  • 中央子午線と赤道上はサンソン図法と異なり正距ではない
  • 緯度40度44分(40.73666度)上のみ緯線の長さが正しく、高緯度は過大に、低緯度は過小になる
  • バビネ図法、ホマログラフ図法、ホモログラフ図法、楕円図法とも呼ばれる
    ※サンソン図法と同じ特徴

モルワイデ図法の緯線の長さが正しいのは 緯度40度44分(40.73666度)のみです。それより高緯度では長くなり、赤道に向かって短くなっています。それに合わせて正積となるように緯線間の間隔が調整されています。

「モルワイデ図法は長さが正しくない」の意味

モルワイデ図法は緯線の距離が正しくないと説明していますが、多くの地図帳に掲載されている並べられた 2つの地図投影法を見てもよく分かりません。

サンソン図法とモルワイデ図法(赤道同一長)

サンソン図法とモルワイデ図法(赤道同一長)

なぜなら、この 2つの地図投影法は縮尺が違うからです。縮尺とは実際の距離に帯する地図上の距離の比です。地図を同じ大きさで表現して縮尺記号(スケールバー)も表示せずに異なる縮尺で表現しているため混乱してしまうのです。

サンソン図法とモルワイデ図法を同じ縮尺で表現すると以下のようになります。

サンソン図法とモルワイデ図法(同一縮尺)

サンソン図法とモルワイデ図法(同一縮尺)

同一縮尺の場合、サンソン図法に比べてモルワイデ図法の方が赤道が短く表現されます。

高校の地図帳ではどのように図示されているのか

高校地理で使用される地図帳の地図投影法ページで縮尺を確認してみました。

帝国書院の『新詳高等地図帳』(2019) ではサンソン図法とモルワイデ図法の赤道長は図上で同じ長さ(縮尺が違う)で、二宮書店の『高等地図帳 改訂版 2019-2020』(2019) は、同一縮尺(赤道長が異なる)となっていました。二宮書店の方が地図投影法の意図をきちんと伝える姿勢が感じられます。ただ、赤道長が図上 50mm と 45mm との違いなので目測でその違いを認識するのは難しいでしょう。

GIS を使えば実際の距離計測は可能

地図投影法で「距離が正しくない」とは、正確には「実際の距離と地図上の距離の比が縮尺と一致しない」ということです。ArcGIS ならどんな地図投影法であっても距離を正確に測定することができます。メルカトル図法は「距離は正しくない」と習いますが、Google Maps でメルカトル図法を表示し、距離計測ツールで計測すると正しい長さが求められます。これは、距離計測ツールが地図上の直線距離を縮尺倍して計算しているのではなく、2点経緯度間を測地線関数という別の関数に代入して計算しているためです。これで求められた測地線距離といいます。

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  • この記事を書いた人

羽田 康祐

伊達と酔狂のGISエンジニア。GIS上級技術者、Esri認定インストラクター、CompTIA CTT+ Classroom Trainer、潜水士、PADIダイブマスター、四アマ。WordPress は 2.1 からのユーザーで歴だけは長い。 代表著書『"地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる』 GIS を使った自己紹介はこちら。ESRIジャパン(株)所属、元青山学院大学非常勤講師を兼務。日本地図学会第31期常任委員。発言は個人の見解です。

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