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あの日見た投影法の名前を僕達はまだ知らない。

2017/7/31 (月)

最近は Webメルカトル全盛期ですが、まだ ArcMap に [ベースマップ] が追加できなかった時代、こんな地図をよく見てたのではないでしょうか。この地図は何の投影法で表現しているでしょうか?

「これは地理座標系でしょう。」と思った方は半分正解。

ArcGIS Pro や ArcMap で座標値が経緯度となっている地理座標系のデータをマップに追加すると、たしかに上記のような表示となります。しかし、平面のディスプレイ上に地球を表現しているのでそれは何かしら投影されていることになります。

この投影法は「正方形図法 (Plate Carree)」といいます。緯度経度が Y軸 X軸で直交し、緯度1度と経度1度が同じ長さで表現されるので、結果として地理座標系のデータをマップに表示させた場合と同じ表現になります。

正距円筒図法(Equidistant Cylindrical)」ともいえますが、厳密に正距円筒図法というには、2つの条件が必要です。

  • 標準緯線が0度(赤道)
  • 赤道半径と極半径が同じ(地球を完全な球体とみなす)

正距円筒図法の「正距」とは、同一経線上の距離が正しいという意味ですが、地球は回転楕円体なので、極周長(経線)の長さは赤道よりもやや短くなります。そのため、標準緯線を 0度としても緯度と経度の格子線網が厳密な正方形にはならないのです。ArcGIS では、Webメルカトルと同様に、赤道半径を極の半径に当てはめて地図投影する正距円筒図法もあります。

経緯度線を表示

半径 1000km の円を表示すると、赤道を中心にした場合は真円ですが、高緯度へ向かうに従って局側が顕著に歪みます。

半径 1000km の円を表示

日本付近を表示するとこのようになります。

日本付近を表示

この日本を見たら違和感を抱いてください。宇宙から地球を見たような表現となる外射図法 (Vertical Perspective)(※注)で日本を中心に表現すると、日本はもっと南北に長いことが分かります。東北地方も南北に長く、北海道本土の東西長は南北長と同じぐらい(正方形に近い菱形)になります。

投射図法(日本中心)で表示

ちなみに、ArcMap ヘルプの正距円筒図法ページを見ると、上図の表現とは異なっています。これは、デフォルトの標準緯線(Standard Parallel 1)パラメーターが 0度(=赤道)ではないためです。そのため、正距円筒図法の標準緯線パラメーターを調整するか、正方形図法を選択してください。

ArcGIS Pro 1.x までは座標系のパラメーターが GUI 上から変更できませんでしたが、バージョン 2.0 以降では ArcMap と同等に変更できるようになりました。

正方形図法は、あえて地理座標系と同じ表現で日本の位置を世界の中心に表示したいときに使えます。データが地理座標系だと日本を中心に表示させることはできません。地理座標系に定義されている標準時子午線の経度を変更すれば一見日本を中心に表示できたように見えますが、これは経度の座標値をシフトする操作となるため、見た目だけ日本を中心に表示するのとは異なる操作です。投影法のプロパティで中央子午線(Central Meridian)を 150 にすると、概ね大西洋で分断された世界地図が表現できます。

そう、僕たちが知らなかったあの投影法の名前は「正方形図法」と言うのです。勿忘草の花言葉のように「私(の名前)を忘れないでください。」泣ける話や。

「あの投影法は正方形図法」もしくは「例の投影法は正方形図法」と覚えましょう。

2017年8月18日追記

「あの投影法」で検索したら 2位になってました。そしたら「例の投影法」でも見つけられるようにしたい。

2018年3月29日追記

※注 当初、Vertical Perspective を「投射図法」と記載しておりましたが、投射図法は一般名詞で、リンク先の Vertical Perspective は説明から「外射図法」であるとご指摘いただきました。日本語の投影法名称は Esri のヘルプに記載のものを引用していたのですが、ひとまず英語名称の投影法に変更しました。「投射図法」は、「外射図法」(有限の距離から見る)や「正射図法」(無限の距離から見る)などの総称で一般名詞であるとのことです。ご指摘ありがとうございます。

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