国土地理院が発行している一般図の種類と投影法

      2016/02/23

先日こんな会話あがりました。

「はださ~ん、ちょっと聞いていいですか?」

「いいよー」

「お客様から『UTM 図法ってどういう時に使われるんですか?』って質問されたんですけど、どういう時に使われるんですか?」

「それって地理で習ったじゃん。」

「いや地理とってないし。」

「あっ」

高校地理で『地形図は UTM 図法』と習ってますが、GIS を使っている人が皆地理を選択していた訳ではないということを理解してませんでした。地理学専攻の後輩君からは

「そんなの知ってるのは地理出身者だけっすよ。」

とあっさり言われ、そっかとうなずくしかありませんでした。

GIS ソフトのトレーニングでは地図、特に紙地図の種類を学ぶ機会はないので、改めて国が発行している紙地図について復習してみます。

地図の使用目的による種類

まずは投影法の前に地図の種類をおさらいしておきます。地図の内容、使用目的で分類すると、地図には

  • 一般図(汎用図)
  • 主題図
  • 特殊図

の 3 種類があります。

一般図

一般図(ArcGIS Online より引用)

一般図(ArcGIS Online より引用)

「一般図」は、海面や水面を含む地表の形状と、その上に存在する交通路や集落等の施設、土地利用や植生東の、基本的な現況を縮尺に応じて総合的に表現した、汎用的な地図です。

主題図

主題図(ArcGIS Online より引用)

主題図(ArcGIS Online より引用)

「主題図」は、あるテーマ(主題)を強調して描いた地図です。上の地図は南海トラフ地震の震度想定を示した図です。他にも土地条件図などがあります。学生時代「主題図があるなら副題図はないんですか?」って先生に聞いて苦い顔されたことがあります。ここに出てくる主題とは(Theme)で、目的のものを示すために使われる地図が主題図です。音楽でもテーマを "主題" と言いますよね。

特殊図

特殊図(ArcGIS Online より引用)

特殊図(ArcGIS Online より引用)

「特殊図」は、特定事項の伝達を目的に作られた地図です。触地図、立体地図、地球儀、写真地図があります。今はソフトの力で 3D 表現もできますが、これも特殊図と言えるでしょう。

他に「基本図」という言葉もよく聞くと思います。国土地理院が公開している「電子国土基本図」や、地方公共団体が整備している「都市計画基本図」などを指しますが、これは上記の定義からすると「一般図」に所属する地図ととらえられます。最近は Web マップで「ベースマップ」「背景地図」という言葉を聞きます。これも基本図であり一般図に分類されます。意味の包含関係は

一般図 > 基本図 もしくは 一般図 ≒ 基本図

どちらでしょうか。

本題に戻り、元々の質問にあった「UTM 図法は何に使われるのか?」の答えですが、日本では UTM 図法は地形図に使われています。UTM(ユニバーサル横メルカトル)図法は、極を除く全世界を中縮尺で均一に表現できる一般図の作成用に開発されました。軍事目的が由来です。米軍発祥で、その後 NATO で統一化されてます。日本の地形図は元々多面体図法でしたが、戦後 UTM 図法に整備しています。

国土地理院が発行する大~中縮尺地図の種類と投影法

国土地理院が整備している一般図の種類と座標系は以下のとおりです。表記は日本地図センター発行の国土地理院刊行地図一覧図に準拠しました。

地図の種類 座標系 備考
2 千 5 百分 1 国土基本図 平面直角座標系 実測図、都市部、3 次メッシュ図郭
5 千分 1 国土基本図 平面直角座標系 実測図、農村部
1 万分 1 地形図 UTM 座標系 編集図
2 万 5 千分 1 地形図 UTM 座標系 実測図、2 次メッシュ図郭
5 万分 1 地形図 UTM 座標系 編集図
20 万分 1 地勢図 UTM 座標系 編集図、1 次メッシュ図郭

「UTM 座標系」と「UTM 図法」の違いですが、横メルカトル図法という投影法でユニバーサル仕様に規格化した投影法がユニバーサル横メルカトル図法です。ユニバーサル仕様とは、投影法のパラメーターに世界均質に精度を保つための規則が設けられているということです。その投影法を採用した座標系が「ユニバーサル横メルカトル座標系」となります。同じ「横メルカトル図法」でも日本の測量法で決められた、ナショナル規格のパラメーターで定義された座標系が「平面直角座標系」です。日本の大縮尺地図では、より高い精度が出せる平面直角座標系が採用されています。ちなみに「平面直角図法」という投影法はありません。

もうひとつ、「平面直角座標系」や「UTM 座標系」は抽象的な名称で、地図(測量)に適用するにはより具体的なものがあります。日本の場合、平面直角座標系は 19 系 x 3 測地系 = 57 種類、UTM 座標系は 6 ゾーン x 4 測地系 = 24 種類存在します。地域によって系やゾーンが異なり、どの測地系を採用するかの乗算で異なります。測地系とは、日本測地系、日本測地系2000、日本測地系2011、WGS84 ですが、平面直角座標系に WGS84 が使われることはないので 3 測地系とります。

また、ユニバーサル横メルカトル図法の特性で、1 つのゾーンで表現できる幅が東西 6° と決められているため小縮尺地図では使えません(東西 30 ″ オーバーラップしても UTM の精度は保証できるとされてます)。そのため、50 万分 1 以下の小縮尺地図には別の投影法が採用されていて、以前まとめた記事(日本の小縮尺地形図の投影法)があるので参照してみてください。

20 万分 1 地勢図についてもう少し追記しておきます。日本地図センターのサイトでは、20 万分 1 地勢図は「北海道は多面体図法」と書かれています。自分も高校の地理でたしかに「北海道だけ違う」と習ったんですが、現在はすべて UTM 座標系です。2007 年 4 月に国土地理院から以下の回答をもらっています。

1/20万地勢図は北海道と九州の離島が多面体図法でしたが、北海道は平成18年度(注:2006年度)に改編集し、UTM図法に切り替えています。また、九州の離島についても19年度(注:2007年度)に改編集を行い、UTM図法に切り替えます。

そういえば昔高校地理のテストで「1 / 200,000 地形図」と書いたら×で、正解は地勢図と習ったけど、なんで「地勢図」というのか謎のままでした。地図と測量のQ&A(A8) に答えが書かれていて、それまでは「帝国図」と呼ばれていたものが 1950 年代になって大人の事情で名称変更が必要になり、「地形の体勢を表す図」ということで「地勢図」と名付けられたんだそうです。ちなみに英語表記は団体によって topographic map、regional map それぞれ採用されているそうです。なので地図の特性をみても地形図と言って間違いじゃない気がします。

まとめ

UTM(ユニバーサル横メルカトル)図法は、地形図、地勢図などの一般図に使われています。

この記事の参考・引用

この本は、GIS に携わる学生や社会人は 1 人 1 冊常備しておくべきです。地図の質問が出たときにほんと役立ちます。

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