回転楕円体が使われない投影法があった

      2016/03/23

ArcGIS for Desktop ヘルプでサポートされている投影法の解説を読んでいると、いくつかの投影法では「球面上でのみサポート」と書かれています。たとえば「エケルト図法(第 4 図法)」にこの記述が書かれています。

以前、これの意味がよく分からなくて上司と話題になった際に、Esri フォーラム のスレッドに書かれているのを見つけてもらいました。

Projections identified as "sphere-only" only use a radius value from a sphere. If you use a projected coordinate system that's based upon a geographic coordinate system that uses a spheroid (ellipsoid), we use the semimajor axis as the sphere's radius.

Esri の Projection 関連のスペシャリストである、Melita Kennedy さんの投稿から解釈すると、「球面上でのみサポート」と記載されている投影法の場合、座標系に回転楕円体を指定しても球体として扱われ、楕円体の長半径が球体の半径として使用される、とのこと。

ということは「エケルト図法(第 4 図法)」では回転楕円体を設定していても実際の地図は長半径を半径とした球体を元に投影しているということになります。それで正確に地図を表示することができるのかと疑問に思いますが、地図と測量の Q&A(2013 年 5 月発行版)の Q50 (39 ページ) で、以下のように記述されています。

Q50 地図投影は、どんなときでも地球を楕円体として計算しなければならないのか?

A50 作図する地図が章縮尺の場合、地球を球として計算しても良いことになっています。この場合、どの縮尺からを、小縮尺と考えるのかが問題となっています。
~中略~
(1)日本の領土とその周辺の地域を対象範囲とする場合
~中略~ 100 万分の 1 で 0.484mm、500 万分の 1 で 0.097mm ですから、地図上で無視できる誤差を 0.1mm までとするなら、おおよそ 500 万分の 1 以下の小縮尺の地図の場合は球として扱っても良いと考えられます。
(2)地球表面全域あるいは極、赤道を含む半球程度を対象とする範囲の場合
~中略~ 600 万分の 1 で 0.103mm、700 万分の 1 で 0.089mm ですから、おおよそ 700 万分の 1 以下の小縮尺の地図の場合は球としても扱っても良いとの結論になります。

世界地図のように小縮尺地図を前提とした投影法では回転楕円体を考慮する必要がないということですね。

さらにヘルプの続きを読むと「~図法球体補正(Desktop version 9.3 以降)」と書かれた見出しがあります。同じ投影法で、投影法のパラメーターが追加されたものです。たとえば先ほどの「エケルト図法(第 4 図法)」では

  • False Easting(東距)
  • False Northing(北距)
  • Central Meridian(中央子午線)

の 3 つのパラメーターを持つのですが、「エケルト図法(第 4 図法)球体補正」では、

  • False Easting(東距)
  • False Northing(北距)
  • Central Meridian(中央子午線)
  • Auxiliary Sphere Type(球体補正タイプ)

と 4 つのパラメーターになっています。実際に ArcMap で投影座標系のプロパティを開くと、いくつかの投影法には「~_Auxiliary_Sphere」と書かれたものが加わっていることが分かります。

ArcGIS の投影座標系

ArcGIS の投影座標系

「~_Auxiliary_Sphere」という投影法はバージョン 9.3 から登場したもので、こちらを選択することで球体の半径を以下の 4 つオプションから選択できるようになります。

Auxiliary Sphere Type パラメータには、0(地理座標系の長半径または半径を使用)、1(短半径または半径を使用)、2(正積半径を計算して使用)、または 3(正積半径を使用し、測地緯度を正積緯度に変換)を指定できます。

原文)The Auxiliary Sphere Type parameter accepts 0 (use semimajor axis or radius of the geographic coordinate system), 1 (use semiminor axis or radius), 2 (calculate and use authalic radius), or 3 (use authalic radius and convert geodetic latitudes to authalic latitudes).

訳語は原文を忠実に訳しているのですが、訳語の意味が理解できなかったので英語に詳しい人に聞いたら「原文が "or" ではなく "as" の間違いじゃないの?」と言われました。そうすると

  • 0:地理座標系の長半径を半径として使用
  • 1:短半径を半径として使用
  • 2:正積半径を計算して使用
  • 3:正積半径を使用し、測地緯度を正積緯度に変換

ということで意味が理解できます。前述のフォーラム スレッドでも、Melita さんは "as" を使われてます。あと「正積半径(authalic radius)」「測地緯度(geodetic latitudes)」「正積緯度(authalic latitudes)」についても調べたはずなんだけど、手元に情報が残ってなかったので後日追記しておきます。正積半径については Wikipedia に書かれてました。

そもそもこの「Auxiliary Sphere Type」なるパラメーター、あることが原因で作る必要が出てきました。ArcGIS でサポートしているメルカトル図法はちゃんと回転楕円体を考慮した投影法が表示できるようになっていたのですが、こいつを球体で表現しないといけなくなったのです。

「地球は赤道半径と極半径が異なる回転楕円体で、、、」と習われたと思いますが、実はメルカトル図法が使われているほとんどの Web マップの地球モデルはすべて球体なのです

その理由は Esri の FAQ に書かれていて、これが「Web メルカトル」につながっていきます。この話題はこちらにつながっていきます。

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