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世界一詳しい Esri の表記とロゴマークの解説

2016/5/6 (金)

先日、同僚から誕生日プレゼントに ESRI ITALIA のネクタイをいただきました。元は一年半年前の納会の景品なのですが「俺より大切に使ってくれるから。」と言って譲ってくれました。暑くなった目頭を押さえながら頂戴し、翌日のトレーニングで使おうと取り出したら瞬時に違和感を感じてしまいました。しばらく違和感の理由が分からなかったのですが、よくよく見ると地球(グローブ)が上下逆になってます(よく分からないという方はページ下のロゴマークと比べてみてください)。おそらくネクタイを身につけた人自身が正しい方向で見えるようにデザインしたのでしょう(笑)。

グローブの刺繍が逆だったということよりも、私の周りでロゴマークが逆だと気づける人が1人もいなかった方がショックでした。ということで、これを機にいろいろ誤解されているところを正して欲しいと思い Esri の表記とロゴマークについて歴史と共に解説していきます。

Esri、ESRIジャパンの表記について

まず、ロゴマークの前に Esri の表記についてです。現在、文書に Esri を表記する際は、○が正しくて×は間違った記述です。

○ Esri
○ ESRIジャパン株式会社
○ Esri Japan
○ Esri 製品
× ESRI(歴史的経緯を説明するために使われる場合はあるだろう)
× esri
× Esriジャパン株式会社
× esriジャパン株式会社
× ESRI Japan
× ESRI 製品
× esri 製品

何が○で何が×なのでしょうか。

略記の変遷

社名の使われ方について解説していきます。

Esri

1969 年設立時からの法人名は、"Environmental Systems Research Institute Inc."(環境システム総合研究所)略して、「ESRI(イーエスアールアイ)」でした。類似の有名ケースで IBM があります。IBM の正式な法人名は "International Business Machines Corporation" で、略して「IBM(アイビーエム)」です。

当時、社長のジャック デンジャモンド氏が自社を語る際は必ず「イーエスアールアイ」と話されていました。しかし、海外では読みやすさから「エリ」という人が多いそうです。日本では当初の国内総代理店が「エリ」と使っていたことから日本での公式な呼称は「エスリ」となっています。ESRIジャパン設立時の最初の Webサイトでも「エスリとお呼びください。」と書かれていました(出典)し、現在の会社概要にも(エスリジャパン)と書かれています。私も学生時代の講義では「エスリ」と聞いてましたが、一部の研究者や海外と直接取引している人、もしくはそれらの人が話している発音を聞いて希に「エズリ」と言っている人もいます。私の恩師も海外の研究者が使っていたことに影響を受けてある時期から「エズリ」と読んでいました。

アメリカでは「エズリ」と略されるのが一般的のようですが、日本以外の米国外でも「エスリ」呼んでいるところがあるようです(出典)。

その後 Esri は 2010 年にブランディングを変更し、略称を「ESRI(イーエスアールアイ)」から「Esri(エズリ)」としました。文書で会社名を表記する際はキャメルケースで表記します。ただし、マスター契約書を読む限りでは法人名 "Environmental Systems Research Institute Inc." はそのままのようです。

ESRIジャパン

2002 年に設立した ESRIジャパンも、当時の商法で登記簿にローマ字を使うことができなかったため「エスリジャパン株式会社」として登記され「略称:ESRIジャパン株式会社」と書かれていました(出典)。後に平成 14 年の商法改正でアルファベットが使えるようになったので、現在の登記簿上の商号は「ESRIジャパン株式会社」です。

2010年に米国では略記を「Esri」に変更しましたが、日本の法人名に関している「ESRI」は変更しないということになったため、現在も登記簿上は「ESRIジャパン株式会社」で読み方も「エスリジャパン」とのままなっています。なお、登記に関係のない法人の英語表記は「ESRI Japan Corporation」から「Esri Japan Corporation」に変更されました。ESRIジャパンを英文で示す場合は「Esri Japan」と書かれます。この表記の変更についてはプレスリリース等公式発表は出されていないため、ほとんど知られていないでしょう。

ちなみに、GIS 関係者の方と話していると古くから Esri 製品を使われている方でも日本の法人は米国の子会社と思われているようです。そのためか日本の法人を指して「エスリは、」と話される方が多いのですが、この場合は「エスリジャパンは、」 というのが適当でしょう。短く話すために解った上で「エスリは、」ということも多いですが、Esri と ESRIジャパンは別の法人です。ESRIジャパンの Web サイトを見ても「Esri(米国)製品の総販売代理店」となっています(出典)。

まとめ

表記米国法人を指す場合日本法人を指す場合
英日混在Esri、米Esri、
米国Esri、Esri(米国)
ESRIジャパン
英語EsriEsri Japan
日本語エスリ、米国エスリエスリジャパン

ArcGIS は米国の法人が開発した製品なので「Esri 製品」となります。ただし歴史的経緯を説明するために「ESRI」と表記する場面もあるでしょう。

ロゴマークの変遷

次にロゴマークについてです。過去の Web サイトのヘッダーに掲載されていた画像を元に読み解いていきます。

Esri のロゴマーク

当初は Four Square と呼ばれるこのようなロゴだったようです。1970 年代のカタログから確認できます。

ESRI Four Square
ESRI Four Square
ESRI Four Square 別パターン
ESRI Four Square 別パターン

私が Esri という存在を知った 2000 年には「グローブ」と呼ばれるロゴマークでした。地球を元にしたデザインで「ESRI」と書かれています。これは 1990 年代に作られました。

ESRI
ESRI ロゴマーク

なお、2007 年のユーザー会で Esri の方と名刺交換した際はこのようなロゴマークでした。名刺には「Environmental Systems Research Institute inc.」と書かれています。

ESRI 旧ロゴマーク
ESRI 旧ロゴマーク

その後、2008 年前半に One ESRI 戦略が打ち出され、各国のブランディングを米国側で統制する動きとなりました。2009 年 4 月 19 日から 22 日までの間に、米国 Esri のサイトがリニューアルされています。アーカイブサイトでは画像が確認できませんが、Web サイト ヘッダーのロゴマークはこのようになっていました。

ESRI Globe 2010
ESRI ロゴ 2008 - 2010 初頭まで

そして、2010 年に略称を「ESRI」から「Esri」に変更した際にロゴマークも変更され、ローワーケース(全小文字)の「esri」となりました。近年のロゴマークは小文字で書かれているケースが多く(参考)、Esri の新しいエンブレムのブランディングもそれを踏襲したと聞きました。2011 年のユーザー会で Esri の方からいただいた名刺は新しいロゴマークとなり、「Environmental Systems Research Institute Inc.」の記載はなくなっていました。

esri エンブレム
esri エンブレム

よく見ると、グローブのグラフィックもモダンになっています。 Esri のロゴマークを含めてブランディングが一新されました。

グローブの比較
新旧グローブの比較

ESRIジャパン株式会社のロゴマーク

続いて国内販売代理店の ESRIジャパン株式会社のロゴについてです。2002 年の設立当初はグローブ ロゴに「ESRI OFFICIAL DISTRIBUTOR」 と書かれた、各国の総販売代理店に与えられるロゴマークが使われていました。

ESRI OFFICIAL DISTRIBUTOR
ESRI OFFICIAL DISTRIBUTOR ロゴマーク

2006 年 8 月 31 日から 11 月 28 日までの間に ESRIジャパン Web サイトのヘッダーのロゴマークが変わっています。「ESRI OFFICIAL DISTRIBUTOR」ロゴから「ESRI Japan」ロゴになりました。Esri のグローブと Frutiger フォントを使用しています。Web サイトのヘッダーも "ESRI Japan" の表記になりました。新しいロゴマークから「エンブレム」と呼ばれています。

ESRI Japan
ESRI Japan エンブレム

2010 年の米国 Esri のブランディング変更に従って、2010 年 7 月にディストリビューター用のロゴマークも変更されました。2011 年 5 月 23 日から 7 月 10 日までの間に ESRIジャパンのサイトがリニューアルされています。

esri Japan エンブレム
esri Japan エンブレム

しばらく「esri Japan」だったのですが、その後「esri ジャパン」となっています。2012 年 11 月 25 日に「esriジャパン」エンブレムに変更されていることが確認できます。日本人には日本語が良いという意向から「esri ジャパン」というロゴマークにしたと聞きました。このあたりもロゴマークと法人名の表記は違うことを知っておかないと誤用してしまうことになります。

esriジャパン エンブレム
esriジャパン エンブレム

ただし、海外向けのロゴマークは「esri Japan」のままなので、ESRIジャパン社員の名刺は表面(日本語表記)と裏面(英語表記)でロゴマークが異なっています。先の法人名の表記を含め、名詞をお持ちの方は表裏比べてみてください。

おわりに

以上が Esri の表記とロゴマークの変遷です。なお、この情報は掲載時点のものとなります。その後方針変更などで表記は変わるかもしれませんが、相違があった場合は公式の情報が正しいものとなります。

冒頭で紹介した ESRI ITALIA のネクタイですが、これは 2008 年ごろにイタリアのディストリビューターがノベルティとして作ったものなので "ESRI" と書かれていて、グローブも味のある旧デザインになっています。ノベルティでネクタイを作るあたり、さすが伊達の国、伊太利亜です。

※ロゴマークは Internet Archive: Wayback Machine など公開されているリソースを引用しています。各ロゴマーク(エンブレム)の著作権は Esri および ESRIジャパンに帰属することを補足しておきます。

2016年5月8日追記

その後調べたら Esri ロゴマークの変遷について誤りがありました。「Esri グローブ」は 1990 年代から登場したようで、設立当初は別にあったようです。また、Esri のロゴが現在のものになる前にもう一段階変更がありました(出典)。

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  • この記事を書いた人

羽田 康祐

伊達と酔狂のGISエンジニア。GIS上級技術者、Esri認定インストラクター、CompTIA CTT+ Classroom Trainer、潜水士、PADIダイブマスター、四アマ。WordPress は 2.1 からのユーザーで歴だけは長い。 代表著書『地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる』 GIS を使った自己紹介はこちら。ESRIジャパン(株)所属、元青山学院大学非常勤講師を兼務。日本地図学会第31期常任委員。発言は個人の見解です。

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